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『息子』の能力が解除された事により、シエスタ及び村民も元に戻ったが、ルイズ達は状況説明とかをどうするのかディ・モールト心配だったが 「ねぇ…本気で夢で通すつもり?」 「スタンド使いですらなくメイジでも無い連中に、今までスタンドに別の物質に変化させられてました。つって信じるヤツが居ると思うか…?」 「………メイジでも、先住魔法って言われても納得できるかどうか怪しいってとこね」 「一応、怪我人やバラされた連中も居ないみたいだしな、事を荒立てると厄介な事になる」 とりあえず、シエスタ以外はスタンドの事を全く知らないので、夢という事で納得して貰う事にした。というか無理矢理納得させた。 駄目だった場合最悪先住魔法で通すつもりだったが、村や村民に傷一つ無い事から、どうにかなり、本命の『竜の羽衣』を見る事に漕ぎ着けた。 「こっちが寺院なんですけど…さっきのは何だったんですか?」 「あれもスタンドだ。…どういうわけか知らないが、本体は来ずにスタンドだけが中途半端な形で来て暴走してたみたいだが…迷惑をかけたな」 「え!いえ!気にしないでください!皆も無事だったんですし」 暴走状態の息子のせいとはいえ、身内のスタンドの不始末という事でそれなりに対応を取らねばならない。 それで出た言葉が『迷惑をかけた』であるが、意外な言葉にその場の全員が半ば唖然とした顔をするハメになった。 まぁ、列車で乗客を巻き込んだ立場であまり言える言葉ではないのだが、ギャングでも人の子。悪いと思えば謝る事だってある。 世話になった人間を巻き込んだのなら尚更なのだが、ルイズが魔法を成功するぐらいのありえない発言には全員ビビったッ! 「……今、なんて言ったの?」 「ダーリンが人に謝る姿なんて始めて見たわね」 「記録が必要」 「オメーら、何か人の事勘違いしてるな」 何か色々と言いたくなったが、全てメローネが悪いという事でこらえた。 (あのヤロー…戻った時に、まだ生きてたら、あいつのコレクション半分捨ててやる) 相変わらず、あの夢では仲間達の最期の姿を見るが、夢を見てあいつらが死んだなどと納得するほどドリーマーではない。 まだ生きていたらとは思うが、なるべく生きて栄光を掴んでいて欲しいと思う。 敗れていたのなら、それを捨てる事もできないのだから。 そんなこんなで草原の片隅に建てられている寺院に着いたのだが、奇妙な違和感を覚えた。 「…この寺院どっかで見た事ある形だな」 他の4人には聞こえない程度の声でそう呟く。 丸木が組み合わされた門の形。石の代わりに板と漆喰で作られた壁。木の柱。白い紙と、縄で作られた紐飾り。 確かにどこかで見た事がある。 そう思いながら、中に入った瞬間どこで見たかを思い出した。 「…あの茶と同じか」 あの時飲んだ茶と同じ。つまりこれを見たのは日本だと思い『竜の羽衣』に目をやるとそれは確信に変わった。 キュルケやルイズは、気のなさそうにそれを見て、タバサだけは好奇心を刺激されたのか、興味深そうに見つめている。 「こいつは…メローネがやってたゲームであったが…確か零式艦上戦闘機…通称『ゼロ』だったか」 「だ、誰が『ゼロ』よ!」 「オメーじゃねぇよ」 『ゼロ』という言葉に反射的反応をするルイズとそれに突っ込むプロシュートを見て、シエスタが覗き込んできた。 ちなみに、メローネがやっていたゲームは『ゼロパイロット~銀翼の戦士~』だ。 メローネが、操作をミスって建物や戦艦にぶつかる時、いちいち「ジオン公国に栄光あれーーーー!」と叫んでギアッチョにキレられていたので覚えている。 「プロシュートさん、これをご存知なんですか?」 「オレも詳しくは知らないが、五、六十年前の日本の戦闘機だったはずだな」 「せんとうき…ですか?」 「ああ、空戦を目的に作られた飛行機だな」 「これが、こないだ言っていた、ひこうきなんですか?」 「もう旧式だが……アレで見たのが確かなら、最高で時速500キロは出たはずだ」 「時速500キロ?それどのぐらい速いの?」 「1メートルが1メイルってんだったな。五十万メイルを一時間で飛ぶ事ができるって事だ」 「このカヌーに翼を付けただけのようなモノがシルフィードより速く飛んだりするの!?」 「旧式機だからな。今あるやつなら、こいつの2~3倍は速く飛ぶ」 「この翼じゃ羽ばたけないと思うんだけど…」 ルイズとキュルケはそのブッ飛んだ速度についていけないでいる。 タバサの方はこれがどうやって、そんな速度を叩き出すのか興味津々といったところだったが。 「どうやって飛ぶの?」 「…コルベールが作ってたやつがあったろ。アレが発展したエンジンを積んでいて、それでそこのプロペラが回って飛ぶ。 まぁそれだけじゃ飛ばないんだが、翼が空気を掴んで楊力を得る。鳥でも羽ばたいたりせずに、気流に乗って滑空して飛んでる時あるだろ。アレと同じだ」 分かる範囲で説明したが、キュルケ、ルイズ、シエスタは未知の技術に頭から煙が出かかっている。 唯一タバサはシルフィードが滑空している所をよく知っているため、辛うじて理解できていたが、やはりそのとんでもない速度に驚いていた。 「ふみゅ…それでこれ、飛ぶの?」 「…話し聞いてたか?」 「こんなのが、そんな速度で飛ぶなんて急に信じられるわけないじゃない…飛べないって言ってたんだし」 「そういやそうだな…何か他に遺したもんは無いか?」 「えっと…あとは大したものは……お墓と、遺品が少しですけど」 「そいつでいい」 シエスタの曽祖父の墓は、村の共同墓地の一角にあった。他の墓が白い幅広の石でできている中、ただ一つだけ黒い石で作られた墓石があり目立っている。 「ひいおじいちゃんが、死ぬ前に作った墓石だそうです。異国の文字で書いてあるので、誰も読めなくって。なんて書いてあるんでしょうね」 「『海…少………木……、……ニ…ル。』…駄目だな。メローネなら読めるんだろうが…オレじゃあ少ししか無理だ」 「この文字が読めるんですか?」 「ああ、行った事はあるから少しはな。こいつは日本語だ」 「日本語…ですか?」 「オレんとこの世界の国名だな。まぁ文化的に東から来たと言えばそうなる。 …こっちじゃあ見ない色だったから珍しいと思っていたが、オメーの髪と目の色はひい爺さんから受け継いだもんだろ」 「は、はい! どうしてそれを?」 「日本に住んでるヤツらは基本的にその色だ」 再び寺院に戻り、プロシュートは『竜の羽衣』に触れると左手のルーンが反応して光り出した。 「なるほどな…確かにこいつも武器には違いないか。しかし…便利っつーか無茶苦茶っつーか何でもアリだな」 操縦法やシステム、構造まで瞬時に理解できたのだが、何故飛ばなかったかということまでは分からない。 「ベイビィ・フェイスを燃やすんじゃあなかったな。…いや、メローネが居ないのに制御できるわけねぇか」 壊れているのなら、『息子』にパーツを作らせようかと思ったが、スデに終わった事なのでそんな事を考えても意味は無い。 散々探り燃料タンクを開くと、飛ばなかった原因が判った。 「そりゃあ飛ぶわけねーな。残量『ゼロ』。ガス欠ってわけだ」 「ゼロって…何が入ってないの?」 「燃料、こいつの場合ガソリン…まぁこっちで言う風石が無いってこった」 「それじゃあ、そのガソリンってヤツがあれば飛ぶのね?」 無言でそれを肯定すると遺品を取りに行っていたシエスタが戻ってきた。 その古ぼけたゴーグルを受け取る。あのゲームでも確かこんな感じのゴーグルを着けていたはずだ。 「ひいおじいちゃんの形見、これだけだそうです 日記とか、あればよかったんですけど、残さなかったみたいで。ただ、父が言っていたんですけど、遺言を遺したそうです」 「まぁ、下手に遺書にされて日本語で書かれて読めないとかじゃあ話にならないからな」 「それで遺言なんですけど、あの墓石の銘を読めるものが現れたら、その者に『竜の羽衣』を渡すようにと」 「全部読るわけじゃあないが、一応その権利はあるってことか」 「管理も面倒だし……大きいし、拝んでる人もいますけど、村のお荷物らしいんです。少しでも、読めるって言ったら、お渡ししてもいいって言ってました」 「ガソリンをどうにかしない事には荷物には変わりないんだが…何時か使う機会があるかもしれねぇし、ありがたく貰おう。オメーにもまた貸しができたな」 「それじゃあ、それが飛んだらそれに乗ってこの村に来てください。 あ、それともう一つ、『竜の羽衣』を陛下にお返しして欲しい、だそうです」 「そういや、日本にも確か『テンノー』ってのがいたな。まぁ多分それだろ」 「ひいおじいちゃんは、『竜の羽衣』は二つあって、一つはこの村に。もう一つは日食の中に消えたって言ってました」 「消えた…?こんな目立つもんなら他に見付かってるはずだが…日食か…可能性はあるな」 「へ?どういう事ですか?」 「消えたって事は、日食の中に向かって飛べば、イタリア…いや地球に戻れるかもしれないって事だ。まぁ日食なんざ、そうそう起こるもんじゃあないが」 それを聞いてからシエスタが後悔した。『竜の羽衣』が飛び、日食が起これば戻ってしまい二度と会えなくなるかもしれないのだから。 ルイズもルイズで結構テンパっている。 最後の最後で帰還手段かもしれないものが見付かってしまっただけに、どう反応していいのか分からないでいる。 (え…?帰っちゃうの…?) 思考が少しばかりアレになるが、日食が来る時がまだ分からないので何とか持ち直し、とりあえずシエスタの家に行く事になった。 その日、プロシュート達はシエスタの生家に泊まることになった。貴族の客をお泊めすると言うので、村長までが挨拶にくる騒ぎになった。 シエスタの家族を紹介されたのだが…何故か、シエスタの弟達から『プロシュート兄ィ』と呼ばれるハメになった。 ペッシやデルフリンガーから兄貴と呼ばれてはいるが、昔、イタリアで暮らしていた時の家族構成では一番下だったりする。 弟分の面倒を見る事は慣れているが、本物の弟の扱いには慣れていないので 正直言うと撤退決め込みたかったのだが、ベイビィ・フェイスの負い目があるので、とりあえず相手した。 だが、相手をしている姿を他3人に思いっきり見られている事に気付いた時には、天井にブチャラティが居た時の気分になった。 「……なに、全員でこっち見てやがる」 「…い、いや、凄く馴染んでるなーと思って」 「その、たまに見せる意外さがたまんないのよね」 「長兄」 一瞬、全員老化させて忘れさそうかと思ったが、さすがに久しぶりに家族に囲まれ幸せそうなシエスタを見て空気を読んだ。 (オレも結構丸くなったもんだな…) そう思うが、ルイズが聞いたら 「まだ十分すぎるぐらい尖ってるわよ」 と言われる事間違い無しなのだが。 適当に相手し終えると、外に出てシエスタが話していた草原へと向かった。 まぁ特に何もする事が無かったし、身の振り方も考えて起きたかったからだ。 夕日が差す草原の中、一人腕を頭の下に組みそこに寝転ぶ。 「しかし、日食か…自然現象頼りってのが痛し痒しってとこだな」 地球でも十年単位でしか見る事のできない現象なのが辛いところだった。 まして、天文学なぞが存在するかどうかすら怪しいここでは、次に日食が起こる時期すら分かったものではない。 星間連動の結果起こる現象なので、どう足掻こうとそれが変わるものではないため、半分は諦めかけていたが、すぐにそれを否定した。 「どうにも、この事になると違和感があるな…」 その原因が分からないのがイラつくとこだ。 「ここにいたんですか。お食事の用意ができましたよ。弟達もプロシュート兄ぃと一緒に食べたいと言ってます」 クスクスと笑いながら後ろからシエスタが声を掛けられるが その服装は、いつものメイド服と違う、茶色のスカートに、木の靴、そして草色の木綿のシャツという格好だった。 「懐かれるようなガラじゃあないとい思うんだがな…」 まぁ職業暗殺者であるからしてそうなのだろうが、どうもルイズ達の影響を受けて雰囲気というか滲み出る気配の質が変わったらしい。 イタリアに居た時なら多分泣かれてもおかしくはないのだが こっちに来てから、殺した事はあれど状況で殺ったという事だ。仕事として暗殺をした事はない。 そのせいなのだろうとは思うが、あまり納得したくないのが本音だ。 「そんな事ないですよ?わたしも、色々と助けてもらってますし」 一瞬だが保夫やってる姿を想像して頭痛がした。どう見てもそんなキャラはしていない。 そんなのはペッシあたりが適任だと本気でそう思った。 「この草原、とっても綺麗でしょう?わたしも一緒に横になっていいですか?」 無言で、肯定しながら沈みかけている夕日を見る。 しばらく、無言の時間が続いたが、少しばかり言いにくそうにシエスタが口を開いた。 「……もし日食が起こったら…やっぱり元の世界に帰っちゃうんですか?」 「帰れるかどうかは分からねぇが試す価値はある」 「…誰か待ってる人でもいるんですか?」 少し考えたが、ルイズにも話している事だと思い話す事にした。 「生き残った仲間が居るが…こっちに来てから大分時間が経ってるからな… 全員くたばってるか、生き抜いて栄光を掴んでるかのどっちかだろうが…栄光を掴んでいたとしても、そこにオレが入る資格は無いな」 「それなら、帰らずにこの世界に居ても… 父も、ひいおじいちゃんの国を知っている人と出会ったのも何かの運命だろうから、よければこの村に、その…住んでくれないかって」 シエスタがそういい終えると、プロシュートが寝ている周りの草が音をたて枯れ始めた。 「結果がどうあれ、それを最後まで見届けないってのはオレ自身の心が『納得』できねぇんだよ。 万が一、あいつらが全滅してた時は、敵討ちって殊勝なもんでもないが…チームの最後の一人として報いを受けさせる必要がある」 周りの草が枯れている様子を見て、唖然としているシエスタに構わずさらに話を続ける。 「それに、こいつは周りの生物を無差別に老化させ朽ち果てさせる力だ。本来ならオレの周りに人が居ていいはずがねーんだよ」 氷という抜け道はあるが、無差別である事は変わり無い。パッショーネに入団し暗殺チームに属していなければ未だ一人だったろうと思う。 草を枯れさせる中、これで、シエスタが逃げるなりしてくれればいいと思い、周りを老化させているのだが…手をシエスタに握られた時は、さすがに焦った。 広域老化ではないが直で枯れさせている。直はグレイトフルデッドの手で触ったものが瞬時に老化させられる。 つまり、本体であるプロシュートの手を掴めば、少なからずその影響は出る。 「何やってんだオメーはッ!」 老化を解除するが、人間なら僅か数秒で寿命一歩手前まで追い込む直触りだ。 解除すれば姿は元に戻るとはいえ、髪や歯などの戻らないものも当然ある。 「………ふぅ…周りに人が居ないなんてことないじゃないですか」 「…無茶しやがる…髪や歯が抜けるだけならまだマシな方だが…下手すりゃあ死んでんだぞ」 元に戻ったシエスタを一瞥するが、髪や歯が抜け落ちた様子は無い。 老化させた事はもう数え切れないが、老化中に氷も持たず直に自ら飛び込んできたヤツは初めてだ。 その行動に今度はプロシュートが唖然とする番だったが、そこをシエスタに小突かれる事になった。 「……ッ」 「プロシュートさんはもっと『自信』を持ってください! わたしを二回も助けてくれたじゃないですか…人を助ける事ができる力を持った人の側に誰も居ないって事なんて無いんですから」 その言葉にまた、沈黙が続いたが、今度はプロシュートがそれを破った。 「クク…ハハハハハハハハ!」 笑った。パッショーネに入団してからは無かったが、ここに来て久しぶりに本気で笑った。 チームのヤツらと居るときも笑った事はあるが、ここまでは無い。 まして、ハルケギニアに来てからは薄く表情に出した程度だ。『魅惑の妖精亭』のアレは営業スマイルなので数に含まれてはいない。 シエスタもシエスタで面食らっている。今までの行動からして、まさか笑われるとは思っていなかったからだ。 「その…す、すいません…わたし、何か拙い事を言ってしまったんじゃ…」 「ハハ…いや…まさかオメーに『自信を持て』なんっつー事を言われるたぁ思わなかったからな」 ペッシにもルイズにも言った言葉が、自分に向けて。しかも、最も戦いと掛け離れたシエスタに言われるとは思いもしていなかった。 一頻り笑った後、笑った姿を見て、心なしか少しだけ明るくなった声でシエスタが答えた。 「もし…もしですよ?日食の中に入っても戻れなかったり イタリアって所に戻って『納得』する事ができれば、この世界に戻ってきてくれますか?わたし、何もできないけど待つことぐらいはできますから」 「日食で戻れなかったとしても、戻る事を諦めるわけはねぇし、戻ったらこっちに来る方法が無いからな。そいつはオレよりルイズに言ってくれ」 「それでも、待ってますから」 「アテが無いのに待たれても困るんだが…まぁそいつはオメーの自由だ。好きにしろ」 「そう言えば、さっき学院から伝書フクロウが届いて、サボりまくったものだから 先生方はカンカンだそうですよ?ミス・ヴァリエールやミス・ツェルプストーは顔を真っ青にしてました」 「タバサの鉄仮面っぷりはリゾットといい勝負だな…一度会わせてみたいもんだが…日食が起こったらあいつを連れて行くか」 「そそ、それなら、わ、わたしを連れて行って、く、ください!」 「…本気にするとは思わなかったが、冗談だ。他の世界のヤツを連れてく程、堕ちちゃあいねぇよ」 「え、あ…そうですよね!冗談ですよね、驚かせないでください。わたしの事も書いてあって 学院に戻らず、そのまま休暇をとっていいですって。そろそろ、姫様の結婚式ですから。だから、休暇が終わるまで、私はここに居ます」 「アレはオメーの家のもんだからな。ガソリンをどうにかしたら、飛んできてやるよ」 「『ゼロ』でしたっけ、その時はわたしも乗せてくださいね」 「そいつに関しては…まぁ一応約束はしといてやる」 シエスタは先に戻ったがプロシュートはまだ残った。 「……3秒やるから出て来い」 そう言うと、草原からルイズが顔を出した。 「…いつから気付いてたのよ」 「そりゃあ、最初からだ」 うぐ、と言葉が詰まり何も言えなくなる。 最初からというと、プロシュートとシエスタが草原に横になっているのを見つけた時からという事だ。 「……それじゃあ…なんで、今まで何も言わなかったのよ」 「用があるなら出てくると思ってたが、出てこなかったんでな。それで放っといても出てこねぇから呼んだってわけだ」 「気付いてるなら、言いなさいよ…わたし一人バカみたいじゃない…」 「しょお~~がねぇだろ、オレはリゾットみてーに洞察力が高いわけじゃあねぇんだからな」 また、『リゾット』という名前が出て、前々から名前だけは聞いていただけに、プロシュートの仲間がどういう人達なのか聞きたくなった。 「ねぇ…前から言ってるあんたの仲間の事教えなさいよ。べ、別に深い意味は無いわよ!ちょっと気になっただけなんだから」 「ま…どうせ、あいつらはこれねぇからな。そうだなまずは……」 出来てるんじゃあないかともっぱらの噂のソルベとジェラード。 『しょぉおお~~~がねぇ~~~なぁ~~~』が口癖でスタンドの使い方を最も良く知っているホルマジオ。 鏡の中に入る事ができ、能力的にはほぼ無敵を誇るイルーゾォ。 自分の弟分で、スタンドは強力だが、まだまだ精神的にマンモーニなペッシ。 趣味は変態的だが、情報処理と追跡能力に関しては皆に頼られていたメローネ。 キレやすく手に負えない事が多いが、その実、仲間のために真っ先に動こうとしたギアッチョ。 そして、自らが最も信頼し、クセのありすぎるチームを纏め、タバサの如く表情を崩さないリゾット。 全員の事を話すと、黙って聞いていたルイズが話し始めた。 「…それで、やっぱり日食が起こったら…帰るの…?」 「そりゃあな。聞いてたとは思うが、試すだけの価値はある」 「…帰って何があるのよ…!仲間が生きてたら、姿を消すんでしょ!? 全員…死んでるなら、一人で組織ってのに戦いを挑むんでしょ!?死んじゃうかもしれないのに…何でよ…!」 半泣きでルイズが喚きたてる。 「諦めが悪いんだよ…オレはな。つーか何でオメーが泣く必要があんだ」 「あ、あんたはわたしの使い魔なんだから、心配するのは当然じゃない…!」 「少なくとも日食が来るまでは居てやっから泣くな。このマンモーニが」 「…マンモーニって言わないって約束したじゃない。なにもうあっさり破ってるのよ、馬鹿ハム」 「ウルセー、マンモーニにマンモーニと言って何が悪い」 「ま、また…!馬鹿ハム!」 「ハッ…!マンモーニのルイズが」 「馬鹿ハム!」 「マンモーニが」 「この…ば……ばばば馬鹿ハムーーーー!躾けてやるーーーーー!!」 「やれるもんならやってみやがれ」 「うるさーーーーーい!ファイトクラブだッ!!」 そう叫んだルイズが鞭を取り出し振り回すが、それを全て避ける。 「よ、避けるなぁーーーーーー!!」 「避けないでどうする。オメーはサボった事でも心配してろ」 その様子を少し離れた場所から、キュルケとタバサが見ていた。 キュルケが何か微笑ましいものでも見るかのような笑みを浮かべながら 「やっぱり、あの二人って、兄妹みたいよね。目的は達成できなかったけど…あたしの入る余地はまだ十分って事よ」 タバサはキュルケを見て、少し考えたが聞こえない程度の小さい声で 「七転八起」 と呟いた。 プロシュート兄ィ ― ヤバイ『アニメルート』へIN! 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「オレの名はゼロ。呪われたウイルス・・・」 【名前】 ゼロ 【読み方】 ぜろ 【分類】 出自はウイルス、扱いはネットナビ 【オペレーター】 なし 【属性】 無属性 【登場作品】 『トランスミッション』 【ナビチップ】 ゼロ(チップ) 【関連チップ】 ゼットセイバー 【CV】 トランスミッション:宇垣 秀成アニメ:渋谷 茂 【詳細】 ゼロウイルスの大元を追ってやってきたゼロアカウントの、最奥に居た存在。 一見するとネットナビに見えるが、実はゼロウイルスから偶発的に生み出された「心のあるウイルス」である。 元ネタは『ロックマンX』シリーズ及び『ロックマンゼロ』シリーズに登場する同名レプリロイド(ロボット)で、Dr.ワイリーが開発した最後のワイリーナンバーズである。 さらに言うとゼロウイルスも『X5』に登場している(しかも、何の因果かそちらもコンピュータウイルスである)。 元ネタとは違い、カーネルやアイリスとの絡みはない。 元は(元ネタ同様)Dr.ワイリーが開発したが凍結され、後に教授が再び呼び覚ました存在。 当初はマザーウイルスとして、存在するだけで常にゼロウイルスを生み出し続ける存在だった。 しかし、ゼロウイルスから送られてくるさまざまな情報を蓄積していった結果、いつしか「心」が生まれ、自我を持つに至った。 心が生まれたことによって、ゼロウイルスを生み出し続ける自身の存在に苦悩しており、「呪われたウイルス」「害悪を撒き散らす存在」と自身を皮肉っていた。 産み出された場所であるゼロアカウントにおり、やってきたロックマンと熱斗に遭遇。 二人を「電脳世界を平和にするため戦ってきた戦士」と評するも、自分もまだ消え去る気はない、と彼らを迎え撃つ意思を見せる。 ロックマンに敗北後は、2人の絆、友情の力に興味を示しつつも潔く負けを認める。 「望んでウイルスに生まれたわけではない」、「自分が生まれ出た世界とそこにいる人々のことを知りたかった」と語るも、ウイルスはデリートされるのは当然のこと、として自分をデリートするよう促す。 この時、「なぞのソース」を入手しているかどうかで展開が変化する。 入手していなければ、そのままゼロはデリートされてしまう。 その場合、ゼロのチップが手に入らなくなってしまうので、永遠にコンプリートが出来なくなってしまう。 そして入手していれば、そのソースデータを解析した光祐一朗によって、ソースデータがゼロの設計図だと判明。 それを元にゼロウイルスを生み出す能力のみを封印し、正式にネットナビへと生まれ変わった。 このイベントの直後に、ゼロから彼のナビチップが添付されたメールが送られてくる。 その後はロックマンたちに協力。ゼロウイルスを認識する能力はまだ残っており、その力で教授の逮捕の為、居場所を突き止めている。 エンディングでは、監視付きではありつつも「広大な電脳世界を見て回りたい」という思いを許可してもらえ、「トモダチ」である熱斗とロックマンに再会の約束を交わし、旅立っていった。 『トランスミッション』は時系列では『1』と『2』の間の設定なので、前述の経緯からゲーム版では『2』以降は吟遊詩人の類いみたく電脳世界を放浪探検していると思われるが、その後は一切ストーリーには関わらない。(発売日は『3』と『4』の間というのもあるかもしれない。) そしてゼロウイルスを通り越し、『4』からは条件を満たすとZセイバーが手に入る。その際はチップグラフィックにもロックマンゼロが描かれていたため、『トランスミッション』未プレイヤーはともかく、『トランスミッション』攻略済み側には「ゼロウイルス版はないのか」と違和感を感じたかもしれない。 戦闘では、本家『ロックマンX』でも使用していた技を使用。 接近し間合いに入ると切るという行動を取ってくる。 移動中は常にシールドが張られており下手に攻撃するとカウンター攻撃を食らうので気を付けたい。 使用技は、まずロックマンゼロおなじみ3段切りの「ゼットセイバー」。セイハットウ! 他は、電気を纏って切り上げる「デンジンセイバー」、デンジンセイバー後に回転しながらゼットセイバーを振り回す「ミカヅキセイバー」。それぞれ原作の技「電刃」、「三日月斬」が元。 更に無敵状態で画面端にダッシュしたのち、全画面範囲の斬撃を2つ放つ「ファントムゼロ」も持つ。 無敵、全画面なので中断も回避もできず、それでいて威力は300というまさに必殺技。 対処法はインビジブル系などの防御系のチップでやり過ごすことだが、もしない場合は最悪技直前にゼロ本体に接触して食らい無敵を発生させればダメージを少なく抑えられる。 こちらの元となったのは、『X5』でボスとして出てくるときに使う即死技「幻夢零」。 実はどの技も全て『ロックマンX5』からの出典で、他作品の技が混ざってはいない。(*1) 発売日がそれぞれ「X5:2000年11月30日、X6:2001年11月29日、トランスミッション:2003年3月6日、X7:2003年7月17日」なので、 この当時にゼロ本人がボスを勤めた作品である『X5』が、印象によく残っていたからだろう。(*2) アニメ版 最終シリーズ『BEAST+』で登場。 原作『トランスミッション』で登場した他のボス(*3)は、『AXESS』から登場していた。 教授に作られた「ゼロウイルス」であるため、実体化も可能。 インビジブルを貫通する斬撃を連続で放つなど、ウイルスでありながら高い戦闘能力を誇る。 第1話「その名はゼロ」から早々に登場。 教授の「超電脳獣グレイザーを復活させる」という計画のため、エネルギーを各地で奪って回っていた。 しかし、第5話「ゼロの正体」で教授のアジト(寿司屋)にCFロックマンとCFブルースが侵入してきた際に、教授から「ウイルスなどただの道具」と告げられると反感を抱き「俺はお前の道具ではない!」と反論し、教授を見捨てて姿を消していった。 この時、熱斗と炎山はゼロがネットナビではなくゼロウイルスであったことを知る。 暫くは行方不明となっていたが、クロスビーストや入道、六方など原作『6』のキャラクターの話を一通り終えた後の第17話「心あるウイルス」で再び登場。 ウイルスとしてインターネットシティを彷徨っていたのだが、ネット警察に探知され避難勧告が発令される。そこへ居合わせたガッツマンは、ゼロの姿を知らないためにゼロも被害者と思い込み、手を握って共に脱出をしようと声をかけてくるが自らは姿を消す。 ウイルスでありながら、ガッツマンが手にを握ってくれたときの感覚に疑問を持ち始め、やがて「感情」が生まれ始めた。 ガッツマンへの恩返しなどでロックマンとも交友関係が生まれた矢先、再び教授が現れる。 教授は自分を見限ったゼロや計画を邪魔したネット警察への復讐として、感情を一切持たないゼロの強化型「ゼロワン」を差し向けてくる。 感情を持たないために隙すら作らないゼロワンがロックマンを圧倒していく光景を見たガッツマンに、「お前に心があるなら友であるロックマンを救ってほしい」と頼まれ、生まれて初めてゼロは「友人を救う」という行動に出た。 傷ついた自身を心配するロックマンに対し「それは憐れみと言う感情」と述べるなど、完全に感情を持ったウイルスとなった。 ウイルスを友と称し案ずる熱斗達に対し、教授は「所詮ウイルスはウイルス」と切り捨てるが、これが熱斗とロックマンの逆鱗に触れてしまい、ゼロワンは獣化ロックマン(ファルザービースト)にファルザークローで腹部を抉られる。 しかしハッピーエンドとはならず、教授はゼロワンに、実体化を伴ってネット警察への自爆特攻を命じる。 これを見たゼロは、友であるガッツマンやロックマン達を救うため、自身も実体化しゼロワンを抑え込み、教授の戦艦に特攻しゼロワンと共にデリートされていった。 【余談】 ゼロのデザインをしたスタッフの話によると、「ゼロの雰囲気を残しつつもウイルスとしての特徴を持たせ、かつ、同じくゼロの要素を持つブルースとイメージが被らないようにする」という点に苦労したらしい。 実は元ネタである『ロックマンX』の方のゼロも『3』でヒグレヤにあるポスターとして登場している。別世界とはいえDr.ワイリーの心境やいかに・・・
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「何よこれ」 その日ルイズが召喚したものは、小さな茨の冠だった。 「何が出てきたんだ?」「何も見えないぞ」「ネズミでも呼び出したんじゃないか?」 ルイズの後ろから、同級生達の声が聞こえてくる。 ゲートから召喚されたものが何なのか、見ようとしているのだろう。 ルイズは一歩前に出て、地面に置かれた茨の冠を手に取った。 よく見ると、中央に穴の開いた奇妙な鏡に茨が絡みつき、冠の様相を見せている。 なんだかよく分からないけれど、これは自分が召喚した使い魔らしい。 「ミス・ヴァリエール、どんな使い魔を召喚したのかね?」 どこまでがおでこなのか分からない教師、コルベールがルイズに近寄り、ルイズの手をのぞき込む。 「あの、これ…」 手の中にある茨の冠を見せると、コルベールは首をかしげた。 「これ?…はて、これとは、どれのことですか?」 「だから、この茨の冠みたいなものです」 「…?」 「…」 「…」 ほんの少しの間、重たい沈黙が流れたかと思うと、コルベールはぽんと手を叩いて他の生徒達に向き直った。 「えー、皆さん!そろそろ帰らねば、次の授業に遅れてしまいます、少々急ぎ足で戻るとしましょう!」 コルベールの声を聞いて、生徒達は空を飛んで、トリスティン魔法学院へと帰っていく。 ルイズを馬鹿にする言葉も少なくない、誰かは「とうとう頭がヘンになった」とまで言ってルイズを侮蔑し、飛び去っていった。 「ミス・ヴァリエール、召喚が失敗したからと言って意地を張ってはいけません、さあ、もう一度やり直しましょう」 「え…」 優しく語りかけるコルベールの笑顔が、ルイズにはとても残忍なものに見えた。 コルベール先生の指導の元、サモン・サーヴァントを何度もやり直したが、ルイズの前に使い魔を呼び出すゲートは現れなかった。 ルイズは何度も茨の冠のようなものを指さし、これが呼び出されているからゲートが開かないのだとコルベールに説明した。 だが、コルベールは気の毒そうにルイズを見ると、今日はもう疲れているのだから休みなさいと言って、魔法学院に帰るよう促した。 そこでルイズは気づく、この茨の冠はコルベール先生に見えていないのだと。 「先生!違います、本当に私、使い魔を呼び出したんです、この茨の冠みたいなものを、持ってください!」 ルイズはコルベールの手を取って、その上に茨の冠を載せる。 だがそれはコルベールの手を通り抜け、地面に落ちてしまった。 「…!」 呆然とするルイズを見たコルベールは、ルイズが意地を張り過ぎて混乱しているのだと考えた。 空を飛ぶことの出来ないルイズは、魔法学院に歩いて帰るしかない。 混乱状態の生徒から目を離す訳にはいかないので、コルベールはルイズと共に歩いて魔法学院へと戻ることにした。 ルイズは茨の冠を胸に抱き、部屋に戻ろうと歩いていた。 その途中キュルケとすれ違い、この茨の冠は他人には見ることが出来ないと、改めて認識することになった。 「あら、ヴァリエール、胸に何か抱いてどうしたの?」 「…”何か”って、ツェルプストーは、これが見えるの?」 「これって、どれのことかしら」 キュルケは、胸の前で交差させたルイズの腕をのぞき込む、だがそこには何もない。 胸すら無い。 「何にも持ってないじゃない、あんた大丈夫?」 「見えない…の?」 「?」 部屋に戻ったルイズは、茨の冠を手に持ち、考える。 これは一体なんだろう? 他の人には見ることも出来ないし、触れることもできない。 ルイズからは見ることができ、触れることもできる。 訳が分からなかった。 やたらにルイズのことを心配し、魔法学院まで付き添って歩いてくれたコルベール先生。 彼はきっと、サモン・サーヴァントに失敗たと思いこんでいるのだろう。 使い魔がいないメイジは二年に進級できない、つまり、明日の授業は皆と一緒に受けることもできず、一年生と一緒に授業を受けることになる。 けれども、自分は確かにこの茨の冠を召喚した。 誰にも認めて貰えない使い魔。 ルイズは笑った、だが、それは自虐的な笑いだった。 何年も何年も、魔法が成功しない、ゼロのルイズと蔑まれてきた結果が、誰にもその存在を認められない使い魔。 本当に自分にはお似合いだと、泣きながら笑った。 ルイズは茨の冠を手に取り、鏡の前に立つ。 これを被ったら、どんな格好になるだろう、花の冠ではなく茨の冠なんて、自分にはお似合いかもしれない… そう考えながら、ルイズは茨の冠を頭に乗せた。 『ハ ー ミ ッ ト ・ パ ー プ ル ! 』 ぱっ、と頭の中で何かの声が響く。 ルイズは咄嗟に部屋の中を見回したが、自分以外だれも居るはずがない。 だが、確かに聞こえたのだ、『ハーミット・パープル』と。 改めて鏡を見ると、頭に乗せたはずの茨の冠が消えていた。 これが後に『ゼロのルイズ』を『ゼロの茨』と名を変え、『虚無の茨』として恐れられる運命の第一歩だとは、本人ですら気づいていなかった。 続かない。
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フーケが潜んでいるという場所に向かうべくロングビルが用意した馬車で移動している。 屋根無しの荷車のような馬車で、襲撃を受けた時の脱出を容易にする為だ。 ロングビルが御者を担っているが、手綱を握る彼女にキュルケが話しかける。 「ミス・ロングビル…手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」 「構いません。わたくしは、貴族の名を無くした者ですから」 「え?だって、あなたはオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」 「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だという事にあまりこだわらないお方です」 「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」 キュルケは興味津々といったようすでロングビルに迫るが、ルイズがそれを止めに入った。 「よしなさいよ、昔の事を根掘り葉ほひ…って何すんのよ!」 言おうとした事を誰かに止められる。手の主はプロシュートだ。 モノ凄い目でルイズを見ているが数秒後気付いたかのように手を離した。 「…一体なんだったのよ」 「…条件反射ってやつだ」 原因はもちろん矛盾点などがあれば辺り構わずキレまくり周りの物に八つ当たりをかますギアッチョだ。 特にこんな場所でキレられでもしたらえらい事になるため思わず体が反応した。 「土くれって言うからには土系統ってわけか…厄介だな」 頭に「?」を浮かべるルイズを尻目に話を進める。 「ええ、あの巨大なゴーレムを操れるからにはトライアングルクラスは確実よ」 それもあったが、一番厄介なのが土系統という事だ。 有機物なら老化させる事も可能だが無機物で構成されたゴーレムを作られるとグレイトフル・デッドではどうにもならない。 ワルキューレの場合は破壊もできたが昨日見た大きさのゴーレムを相手にするとなると正直厳しいものがある。 (メローネのベイビィ・フェイスと同じタイプって事か イルーゾォやメローネなら楽なんだろうがオレじゃあ本体狙いになるな) 「ところで、一つ聞きたいんだけど」 「何だ?」 「…まさかとは思うけど、わたし達を巻き込んで老化させるとか考えてないでしょうね?」 初日の惨状を見ていたルイズがそう問うが 「状況によるな」 その瞬間空間に「!」という文字が見えたような気がした。 「嫌よ!絶対嫌!」 「お願いだからそれはだけは…!」 タバサを除いてほぼ全員必死だ。 ロングビルに至っては半分脅えている感がある。 「…持ってろ」 「なによこれ」 「老化防止薬みてーなもんだ」 何か物が入った袋を4個渡されるが、袋はしっかり封が施されており中身は見れなかった。 「ちょっとそれ私にもよこしなさいよ」 「全員分ちゃんとある…ってどこに入れてるのよ!」 「そりゃあ、貴方には無理な場所よ」 まぁ、つまり胸に仕舞ったわけで『ゼロ』vs『微熱』第四ラウンドが開催されそうになるが 「馬車内」 タバサが冷静に突っ込みそれを終結させ、馬車が森に入り 「馬車でははここまでのようですね…ここから先は徒歩で行きましょう」 馬車を降り徒歩でしばらく進んだところに開けた場所がありそこに小屋らしき廃屋があった。 「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」 ロングビルがその小屋を指差すが人の気配は全く無い。 あの中に居ないとしても唯一の手掛かりであるからには調べないわけにはいかない。 タバサがちょこんと正座をし杖を使い地面に絵を書き作戦を提案する。 1.偵察圏囮が小屋に近付き小屋の様子を調べる 2.中にフーケが居れば挑発し誘き出す 3.フーケがゴーレムを作ろうとして外に出たところに魔法の一点集中砲火を浴びせこれを撃破する だがそう説明し終えるより先にプロシュートが小屋に近付いていた。 「ちょ…何やってんのよ!」 「フーケが居る居ないにしても…こうした方が早いからなッ!グレイトフル・デッドッ!!」 その瞬間、プロシュートを中心とした1~2メイルの植物がボロボロと音をたてて崩れ始めたッ! その様子を見て一瞬にしてプロシュートから離れる女性陣だったが 自分達が老化していない事を確認するとため息を吐きながら小屋に近付いてきた。 「危ない事するわね…無関係の人とか居たらどうするのよ」 「たいした事ァねーだろォーッ!破壊の杖が使われたら甚大な被害が出る…それよりは軽く済むッ!!」 少し時間が経ってから小屋に入る事にしたがロングビルだけは周辺の偵察に行くと言い残し森に消えていった。 ドアを蹴破るようにして中に入ったが、マタギの炭焼き小屋のようで人の隠れるような場所など無い。 あるのは崩れた暖炉とテーブル、その上に無造作に置かれているボロボロの服、酒瓶、薪、その横にある大きめの箱―チェストだけだ。 フーケの残した痕跡が無いか探っているところにタバサがチェストの中から何か物を取り出し 「破壊の杖」 と杖らしき物を無造作に取り出していた。 「随分とあっけないわね…!」 キュルケがそう叫ぶがプロシュートは違った。 (あのジジイの言った通り…か。確かにこれはオレの世界のもんだな) パンツァーファウスト ―― 第二次世界大戦においてドイツ軍が開発した歩兵が使う携帯用対戦車擲弾で確かに杖にみえない事も無い。 連合軍主力戦車をも撃破する事が可能で携帯用兵器としては大戦中最大級の威力を誇りまさにナチス脅威の科学力である。 破壊の杖を手にそれを見るが、何故か使い方までもが理解できてくる。 妙な感覚があった。 「それにしても破壊の杖だけで肝心のフーケが居ないなんて…」 その刹那、外からルイズの悲鳴が飛び込んできた。 「きゃぁああああああ!」 それを聞くとキュルケとタバサをスタンドと自分で引っつかみ外に飛び出す。 ドグシャァア 飛び出した瞬間小屋の上半分が吹っ飛ばされ、そこに居た者は…… 「ゴーレム…!」 それと同時にタバサとキュルケがそれぞれの魔法で攻撃を仕掛けるがゴーレムは依然として健在でびくともしていない。 「無理よ…こんなの!」 「戦略的撤退」 キュルケとタバサが敵わないとみて一目散に逃げ出す。 が、ルイズはそれに加わっていない。どこか ゴーレムの背後に立っていた。ルーンを呟き杖をゴーレムに向け振りかざす! 爆発は起こったがゴーレムの巨大な質量からすれば微々たるものだ。 表層を僅かに欠けさせただけで損傷には至らない。 爆発を受けたゴーレムがルイズに気付きその巨体をルイズに向けるべく振り向く。 「オメーじゃあ無理だ、逃げなッ!」 「嫌よ!フーケを捕まえれば、もう誰もわたしを『ゼロのルイズ』なんて呼ばなくなるんだから!」 そう答え返すルイズの目はマジだった。 「それにあんた言ったじゃない!『成長しろ!』って『成長しなけりゃあゼロと言われるだけだ!』って…!」 そう言い放ち杖を握り締める。 「あいつを倒さないと『成長』できないのよわたしは!」 ゴーレムが足を持ち上げルイズを踏み潰そうとした。 ルイズは魔法を使うべくルーンを呟き杖を振るが、結果はさっきと同じだ。 爆発が起こるがゴーレムはびくともしない僅かに土が欠けるもゴーレムはその歩みを止めようともしない。 ルイズの視界に巨大な足が広がり目をつぶった。 だが覚悟していたものは訪れない。目を開けるとゴーレムが足先を砕けさせていた。 「…デカイ事はデカイが堅さはねーな」 破壊力B、魔法で動かされているとはいえ土を破壊する事など造作も無い。 足先を弾け飛ばしたゴーレムだったが土が再び集まり何事も無かったかのように再生した。 「なるほど…土だけの事はあるな」 ルイズを引っつかみゴーレムから一旦離れる。 そして、距離を取ったところでプロシュートがルイズの両肩を掴んだ。 ―殴られる プロシュートがキュルケやギーシュにした事を思い出し思わず目を閉じた。 コツン だが、襲ってきたものは額への軽い衝撃 目を開けるとプロシュートが額を合わせており思わず赤くなって離そうとする 「ちょ…なに!?」 「ルイズ ルイズ ルイズ ルイズよォ~~ 成長したいんなら『状況を把握しろ』…おまえの魔法じゃあ、あのゴーレムを破壊するのは無理だ。そうだろ?」 うぐ…とルイズが言葉に詰まる。 「だが、オメーのその『覚悟』がありゃあ、あのゴーレムを倒せる。ここが正念場だぜルイズ!」 「倒せるの…?あのゴーレムを」 「こっちじゃあ破壊の杖って言うんだったな、こいつを使え。使い方は教える。オメーがやるんだ」 一瞬迷ったようにしたが、目をプロシュートに合わせ―― 「…分かったわ」 「ダーリンとルイズは?」 「分からない」 シルフィードに乗ったタバサとキュルケが二人を探していると… 「あのバカ!一人でなにやってるのよ!」 キュルケがゴーレムから破壊の杖を両手で押さえ逃げるようにして走っているルイズを見つけた。 「近寄れない…!」 それを助けるべくルイズに近寄るがゴーレムが拳を振り上げ近づけないでいた。 ゴーレムが止まる。だが同時にルイズも止まりゴーレムに向き直った。 「なにやってるの!今のうちに逃げなさい!」 「これでいいのよ…!ゴーレムが足を止めてる今がいいんじゃあない!」 ルイズが教えられたとおりにそれを構え狙いを付け…引き金を引いた。 「んきゃぁああ」 反動で後ろに2~3回転するが、弾頭が放物線を絵描きながらゴーレムに吸い込まれるかのように飛んでいく。 弾頭はゴーレムの上半身にめり込むように着弾し―――爆発した! 自分がいつも失敗して起こしている爆発とは比べ物にならないぐらいの音と閃光。 目を閉じ光が去るのを確認してからゆっくりと目を開けるとそこにはゴーレムの下半身がそこにあった。 さすがに上半身を完膚なきまでに破壊されたのでは再生もできないようで膝を付きそのまま土に還っていった。 「スゴイ…まさに破壊の杖ね…」 「やるじゃない…破壊の杖を使いこなすなんて」 「奇跡」 ゴーレムが破壊されたのを確認した二人が地上に降りてきた。 「ところでダーリンはどこ?」 「プロシュートならさっきの小屋の所よ。最後の仕上げがあるとか言ってたけど」 「それじゃあ早く迎えにいかないと」 だが小屋があった広場には誰も居なかった。 「…まさかフーケに?」 「そういえばミス・ロングビルもいないわ…」 三人にまさかという考えが浮かぶが茂みの中からロングビルが現れた。 「ミス・ロングビル、無事だったのね! フーケがどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」 キュルケがそう尋ねるがロングビルは顔を横に振った。 「破壊の杖はどうされたんですか?」 「ここよ」 そう、言うとルイズが抱き込むようにして抱えている破壊の杖を見せる。 「そう、それじゃあそれを渡してもらおうかしら」 その瞬間時が凍る。 「…どういう事ですか?」 「まだ分からない?さっきのゴーレムを操っていたのは私」 「え…じゃああなたが…土くれのフーケ!?」 「御名答、それにしてもさすが『破壊の杖』ね。私のゴーレムがバラバラじゃあない」 三人が戸惑いながらフーケに杖を向けるがそれよりも早くフーケが茂みの中から何かを引っ張りだしそれを盾にした。 (~~~~ッ!あのバカ!思いっきり無関係の人間巻き込んでるじゃないのよ!!) 弱りきった老人を盾にしたフーケが言い放つ。 「おっと。動かないで欲しいわね?この無力な平民を一緒に巻き込んでもいいっていうのなら話は別だけど」 杖こそ捨てはしないがさすがに人を盾にされてはどうしようもなくなっていた。 「どうして…!?」 「そうね…死ぬ前の手土産に教えてあげるわ この破壊の杖を奪ったのはいいんだけれど使い方が分からなかったのよ」 「使い方…?」 「ええ、振っても魔法をかけてもうんともすんともいわないんだから… そこで魔法学院の人間なら使い方を知ってると思ってここに連れてきたってわけ」 「わたし達の誰も知らなかったらどうするつもりだったの?」 「その時は全員ゴーレムで踏み潰して次の連中を連れてくるだけよ もっとも『ゼロ』って言われてた貴方が使い方を知ってるだなんて思ってもいなかったけど」 フーケが笑いながらそう言い放つ。 「話はここまでね。その杖を渡さないとこの可哀想な平民が死ぬ事になるわよ?」 三人が迷う、破壊の杖を渡せばどんな被害が出るか分からない。 だけど目の前の人間を見捨てるという事ができないのも事実。 迷いに迷い杖をフーケに向け投げようとした瞬間―― 「理由は…分かった」 その場に居る者以外の声がした。 「だ、誰!?」 フーケが辺りを見回すが誰も居ない。 この場で自分達以外の人間は自分が盾にしている今にも死に掛けている老人だけ――老人!? その瞬間老人がフーケの手を掴み ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「だが、もう何もできないさ…ただしお前がだ……『フーケ』」 ズキュン! 「うぁああああああああああ!」 その瞬間森の中に土くれと呼ばれた盗賊の叫び声が響き渡った フーケ ― 直触りを受け老化 二つ名 土くれ ←To be continued 戻る< 目次 続く
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翌日、『竜の羽衣』こと零式艦上戦闘機を学院に運ぶべくシルフィードで学院に戻り オスマンに竜騎士隊を手配してもらいゼロ戦を運んだのだが それを見たコルベールが妙にテンパった様子で頭を…もとい顔を輝かせて『ゼロ戦』に寄ってきた。 ちなみに輸送代はギーシュの遺産+オスマンに負担させた分で全額出したので問題無い。 彼の生き甲斐は研究と発明であり、ドラゴンに運ばれてきたゼロ戦を見て、好奇心を刺激されスッ飛んで駆けつけてきた。 息切れしながら走り、ただでさえ少ない髪の毛がヤバイ事になってるのも気にしない。 「き、きみ…これは…一体何だね!?」 汗まみれの顔で質問攻めにしてくるので非常に鬱陶しい。いっその事老化させちまおうと思ったのだが その心を読んだ他の三人が悲しそうな顔をしているので止めた。 やはり、これ以上髪が減るのは見るに耐えないらしい。 「…この前、言ってたエンジンを積んでるやつで、オレんとこじゃあ、飛行機ってやつだ」 「ひこうき…?飛行というからにはこれが飛ぶというのかね!?詳しく説明してくれたまえ!!」 顔を寄せてくるコルベールをスタンドで阻む。弟分でもないオッサンの顔を至近距離で見る趣味は無い。 「そうだが…それ以上寄ると毛を抜くぞ、てめー」 ~5秒後~ 「調子乗ってスイマセンでした」 綺麗に土下座するコルベールの姿がそこにあった。 「次、その顔で寄って来たら全滅させっからな…」 スーツに中年の汗が付くと言うのは非常に避けたい事なのでこっちもこっちで結構必死だ。 土下座を終え顔を上げると、ゼロ戦の近くに寄りあちこちを探り始めそこからまた質問攻めを始めた。 「いや、ホントすまなかったからそれだけは…それでこれは羽ばたくようにできていないが、どうやって飛ぶんだね!?」 「エンジンでそこのプロペラが回って推力を得て飛ぶ」 「なるほどよく出来ておる!私の作ったエンジンでも、これと同じものが飛ぶようになれば…」 半分陶酔したような顔をしているコルベールに三人娘が引いているが当の本人は気にしていない。 「では早速飛ばして見せてくれんかね! ほれ! もう好奇心で手が震えておる!」 もうスデに彼の頭の中ではゼロ戦と自分が作ったエンジンを積んだ飛行機が大隊を組んで飛行している姿が映っているらしい。 今にも「バンザーーーーーイ」と叫んで何かに特攻しそうだったが、とりあえずガソリンが作れるかどうかを言う事にした。 「その為の燃料…風石みたいなもんなんだが、ガソリンっつーもんがねぇと飛ばねぇんだよ、そいつは」 「ガソリン…なんだね?それは」 今にも『しぶいねぇ…』と言いたげな顔のコルベールを無視し、ゼロ戦の燃料タンクを開き 固定化のおかげで化学変化を起こさずに僅かに残っていたガソリンの臭いをかがせた。 「ふむ…嗅いだ事のない臭いだ…温めなくてもこのような臭いを発するとは…… 随分と気化しやすいのだな。これは、爆発したときの力は相当なものだろう」 「火気厳禁だ。仮にこのタンクが満タンで、そこに少しでも火が入ると、この周りが吹っ飛ぶ」 「私が作った愉快なヘビ君に使ってた油では駄目なのかね?」 「ありゃ駄目だな。オレんとこじゃ石油っつーやつから精製したモンがガソリンになるんだが。こっちに石油はあんのか?」 「石油とだけ言われてもな…どういったものなんだね?」 「化石燃料…だったな。地下に埋まってるモンで『粘り気のある黒い液体』ってとこだ。もちろん燃えるが…そのままだと煙とかがスゲーって聞いたな」 一方こちら三人娘。科学的話をされてもサッパリ分からないので完全に放置食らっている。 「……今日の晩ごはんなんだろ」 「……よく、あの臭いをかいだ後でそんなこと言えるわね」 「……はしばみ草!」 「黒い燃える液体か…自然に湧き出したりするものかね?」 「普通、掘って採掘するもんだからな…無いとはいえねぇだろうが」 「とりあえずサンプルを採って私の研究室に来たまえ。それと…君達三人は分かってるだろうね?」 コルベールが妙に体を捻らせ三人を指差しつつ、ズキュゥゥゥゥンというような音を出しながら、三人娘に窓拭きを命じた。 研究室は本塔と火の塔に挟まれた一画にあった。お世辞にも綺麗とは言えない。むしろボロいという表現が適切な掘っ立て小屋である。 「自分の部屋では追い出されてしまってね」 そう説明されるが、この臭いだ。そりゃあそうだろうと思う。 回りを一瞥するが、、本棚や天体儀はまだいい。オリに入ったヘビやトカゲなどがいて、妙な異臭が漂いそれに顔を顰めた。 「なあに、臭いはすぐに慣れる。しかし、ご婦人方には慣れるということはないらしく、この通り独身なんだがね」 「ヤローでも慣れたくねぇよ…で、ガソリンなんだがどうにかなりそうか?」 「難しいな…石油というのがあれば錬金できるかもしれないが…それに近いものでもいい」 「化石燃料っつーぐらいだからな…こっちに石炭はあんのか?石炭も化石燃料のはずだぜ」 「石炭か…それなら用意できる…おもしろい!調合は大変だがやる価値はあるな!」 「頼む」 「しかし、東の地の技術は素晴らしい…私も何時の日か行ってみたいものだ」 「期待させたようでわりーが、こいつぁ別の世界の技術だ」 東の地という事で通してもよかったが、ガソリンの精製をやってくれる者に偽りで通すのは、恩を仇で返す事になる。 リスクはあるが、他のヤツにベラベラと話すようなタイプでもあるまいと判断し事実を話す事にした。 「別の世界…なるほど。確かに君が取ったミスタ・グラモンへの言動、行動、そしてその能力。その全てが我々ハルケギニアの常識から掛け離れている」 「あのマンモーニか…あいつにオレを平民だからっつーナメた理由で、殺す気があったからな。 悪いが見せしめも兼ねて始末させて貰った。ここのマンモーニどもじゃあ、ああでもしねぇと後が鬱陶しい」 ぶっちゃけ、コルベールの耳が痛い。彼自身はそうでもない方だが プロシュートが召喚されたとき、やり直しを要求したルイズを突っぱねて契約させたという理由がある。 貴族がいくら神聖だの、重要だの言ったところで、呼ばれた方からすれば、いきなり拉致され一方的に奴隷契約を結ばれるようなものだ。 命を救われたという恩義があったからよかったようなものの、そうでなければどうなっていたか分かったものではない。 魔法学院、下手すればトリステインは今頃老人の死体だけという事もありえただけに、少々背筋が寒くなった。 『炎蛇』の二つ名を持つコルベールであるが、何故か、過去に捨てたはずの軍人としての本能が『悪魔憑き』の能力の前には歯が立たないと警告している。 火を出した瞬間、死亡確定だからなのだが、体温の上昇で老化速度が変わる事はコルベールには知りようの無い事だ。 そう考えているコルベールを射抜くような目で見ているプロシュートに気付いたのか、話を戻す。 「私は、周りから変わり者だの、変人だの言われていて、未だに嫁さえこない。しかし…このコルベールには信念がある!」 いい年こいたオッサンが15の少年のような目をして熱く語り始めている姿を見て少し引いたが、言ってる方は構わず話を続ける。 「ハルケギニアの貴族は、魔法をただの道具……それでも使い勝手のいいような道具ぐらいにしかとらえておらん だが、私はそうは思わないのだよ。魔法は使い方次第で変わる。伝統や既存の考えに拘らず、様々な使い方を試してみるべきだとね」 それを聞いて、なにかわからんがコルベールが未熟ながらもエンジンを作れた理由を納得した。 能力の応用という、ここにおいては珍しい事ができる存在。 スタンド使いが最も必要とさせられる能力。それをコルベールは持っていた。 「能力の応用…ホルマジオがよく言ってる、くだるくだらねーは使い方次第って事だな」 「やはり君は別の世界の人間のようだね。そのホルマジオ君という人にも会ってみたいものだよ」 「……そいつぁ無理だ」 「別の世界だからなのだろう?分かっているよ。だが何時の日か君の世界との道を「違う」」 ちょっとトリップしているコルベールの言葉を遮る。 「……そいつはもう死んでるんでな」 「………拙い事を聞いてしまったようだね」 「気にするこたぁねー。…『覚悟』の上での結果なんだからよ」 組織から離反した事を後悔など微塵もしていない。 そんな事をすればホルマジオとイルーゾォの覚悟を汚す事になる。 「それで、ガソリンの他にもう一つ頼みてぇ事があるんだが…日食って何時起こるか分かるか?」 「日食…か。前に起こった時期を調べれば大体は特定できるだろうが…余裕があれば調べてみよう」 「つ…疲れた…」 よろよろとベットにボテっとルイズが倒れこむ。 そりゃあ学院の窓拭きやっていたのだから疲れも溜まるというものだ。 もちろんプロシュートは生徒でもないので、そんな事は知ったこっちゃあない。 「姫様の結婚式までもうすぐなのに…詔も考えなくちゃいけないのに…どうしよう」 「つまり、まぁ何も思いつかなくてヤバイってわけか」 ぶっちゃけ、どうでもいいため殆ど聞いていない。 「そうなんだけど…なにも思いつかないから困ってるのよ」 どうでもいい。と言おうとしたが、そんな事を言えば確実にこじれるので一応聞く事にした。 「じゃあ、考え付いたとこだけ言ってみな」 その後、ルイズが前文と各属性への感謝を読み上げるが 「そりゃ詩じゃなく、形容詞や諺だろ」 という突っ込みにあえなく爆沈させられたのは割愛させていただく。 ベッドに倒れたまま、床に藁の上に布を重ねた即席布団で寝ているプロシュートにルイズが尋ねた。 ちなみに、ベッドに寝ていいと言ったが 「んな事できるか」 の一言に一蹴させられている。 「組織ってとこで…何やってたの…?」」 「…どうしても聞きたいってのなら教えてやらねーでもないが…後悔すんなよ?」 「わたしは、あんたの使い魔なんだから…そのぐらい知っておく義務があるのよ」 少しばかり躊躇ったが、きっぱりと言った。 「暗殺だ」 「…あ、暗殺って…こ、殺すやつよね…人を」 「そりゃあな」 暗殺という言葉にビビったが、よくよく思い出してみれば 『ブッ殺すと心の中で思ったなら』発言などがあるために真実味があった。 「な、何で…そ、その…暗殺なんてやってたの…?」 「あそこで、生きるための手段だ。別に趣味でやってたわけじゃねぇよ」 趣味では無いと聞き安心したが、やはり殺しである事に少しだけ嫌な感じがする。 「それで、組織に信頼を裏切られて離反したんだったのよね…逃げようとは思わなかったの?」 「そこで逃げるようなヤツなら暗殺チームなんぞに属してねーよ。 殺すっつー『覚悟』を持ってるからには殺されるかもしれねぇっていう『覚悟』も持ってなけりゃあいけないんだからな…」 「…元の世界に帰っても…暗殺とか…するの?」 「さぁな、ボスが生きてたら報いを受けさせるために殺るだろうが…それが終われば、他人の命令で殺す気にはなれねぇな」 当然、リゾット達が生きていても、それに加わる気は無い。 そう言うとルイズがベッドから降り、即席布団の上で腕組んで寝ているプロシュートの横に寝てきた。 「狭いんだが、何やってんだ」 文句に答えずに、怒ったような声で続ける。 「わたしが、帰らないでって命令しても…帰るの?」 「あいつらは仲間通り越して家族みてーなもんだったからな。日食が来る時期が分かんねー。来れば、そん時決める」 「家族か…そりゃあ帰りたいわよね…」 自分とて家族、特にカトレアの安否が不明になればスッ飛んで駆けつけるはずだと思う。 だから、それ以上何も言えなかった。 しばらく沈黙が続いたが、片方が口を開いた。 「ま…オメーもペッシみてーなもんだからな」 要は弟分扱いなのだが、兄貴属性的に未熟な弟分を放って帰るってのもどうかと思い始めている。 短期間で成長させられればいいのだが、経験上それがそう巧くいかない事をよく知っているため、結構悩むところである。 ペッシ=マンモーニ扱いされた事により何らかのリアクションがあるかと思っていたがルイズはスデに夢の世界に突入して子供のような寝息を立てていた。 「……このマンモーニが」 ペッシと違うのは、ギャング的説教で叩き込めれないとこだ。 ギャング世界に漬かりきっていたため、それを封印して成長させるとなると結構な事だった。 数日後 トリステイン艦隊旗艦『メルカトール』号がラ・ロシェール上空に艦隊を率いて布陣していた。 艦隊戦を行うわけではない。新生アルビオン政府がゲルマニア皇帝とアンリエッタの婚礼に出席する大使を乗せた艦隊の出迎えに出ているのである。 「やつら遅いではないか。艦長」 そうイラついた声で呟いたのは、艦隊総司令『ラ・ラメー』 「獅子身中の虫ですからな。虫は虫なりに着飾っているのでしょう」 そう返すのは『メルカトール号』艦長フェイヴス。この男もアルビオン嫌いで通しているため似たような状態だ。 「左舷上方より艦隊接近!…確認しました。アルビオン艦隊旗艦『ロイヤル・ソヴリン』級…『レキシントン』です」 鐘楼に登った水平の報告に、ラ・ラメーと艦長がそちらを見ると、巨大な艦が後続艦を引きつれこちらに降下してきていた。 「あれが『ロイヤル・ソヴリン』か…なるほど、あの艦を奪われたのでは王党派が太刀打ちできんわけだ」 あえて、現在の艦名であるレキントンとは言わないのが彼なりの意地である。 「戦場では会いたくないものですな…こちらの戦列艦が小型艦艇のようにしか見えません」 「正面からぶつかればな…そうでなければ、やりようはある。……もっとも今砲撃されれば成す術は無いが」 「は…?今なんと?」 「いや、ただの杞憂だ」 砲撃云々の部分は、聞こえない程度の呟きだったのでフェイヴスには聞こえていない。 そこにアルビオン艦隊の旗流信号を確認した水兵が内容を報告した。 「レキシントンより旗流信号を確認しました。『貴艦ノ歓迎ヲ謝ス。アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号艦長』以上です」 「こちらは提督を乗艦させているというのに、艦長名義での発信とは…」 「あの艦があるにしろ…元々我が艦隊とアルビオン艦隊では 空挺戦力に差がありすぎるのだから仕方あるまい。返信だ。『貴艦隊ノ来訪ヲ心ヨリ歓迎ス。トリステイン艦隊司令長官』、以上」 『メルカトール』のマストに旗流信号がのぼるとアルビオン艦隊から大砲が一定の間隔を開け放たれた。 儀礼用の空砲だが、その空域の空気を震わせるのは十分だ。 「…よし、答砲だ。順に7発」 「よろしいのですか?最上級の貴族なら11発と決められておりますが」 「向こうは、艦長が旗流信号を出してきたのだろう?司令長官でもないのに11発撃つ必要はあるまい」 くだらない意地と言えばそうだが、フェイヴスもそれが気に入ったのかにやりと笑ってラ・ラメーを見つめると命令を出した。 「答砲用意!砲数7発、順次射撃!準備出来次第撃ち方初め!」 「ハルケギニア中に恥を晒す事になる…か」 そう低く呟くのはレキシントン号艦長ボーウッドだ。 正直、この作戦には乗り気ではないのだが、軍人である自分には命令に拒否権は無い。 まして、戦死したはずのウェールズもそれに関わっているとなると… 艦隊司令長官のサー・ジョンストンが何か喚いているが聞いていない。 実戦経験の無い司令長官など飾りもいいとこである。空なら自分がルールブックだ。 「左砲戦準備!気付かれるなよ」 「Sir!Yes Sir!左砲戦準備!」 それと同時に、轟音が鳴り響きトリステイン艦隊より答砲が放たれる。 「作戦開始だ!『ホバート』号乗員は速やかに退避!退避が完了し次第『ホバート』号を自沈させよ!」 その瞬間軍人の顔に変化した。ここまでくれば後戻りは出来ない。そうなればただ、作戦を遂行するのみである。 答砲を発射しているメルカトール号の艦上が騒がしくなる。 アルビオン艦隊、最後尾の旧型艦が炎上、轟沈したからだ。 「旗流信号を確認しました!『『レキシントン』号艦長ヨリ トリステイン艦隊旗艦。我ガ方ノ『ホバート』号ヲ撃沈セシ、貴艦ノ砲撃ノ意図ヲ説明セヨ』以上です!」 「撃沈だと!?馬鹿なッ!至急返信!『本艦ノ砲撃ハ答方ナリ。実弾ニアラズ」 そう送るが、すぐさまレキシントンより返答が返された。 「タダイマノ貴艦ノ砲撃ハ空砲ニアラズ。我ガ艦隊ハ貴艦ノ攻撃ニ対シ応戦セントス」 その瞬間ラ・ラメーが悟った。そして瞬時に命令を下す。 「…謀ったな!!全艦に伝達!砲撃に備えよ!!」 艦隊に指令が行き渡ると同時にアルビオン艦隊から轟音が鳴り響いた。 「て、敵艦発砲!!……『ニーベルング』!『ヴァレンシュタイン』!『ケルンベル』!被弾!!」 「こ、この距離で大砲が届くだと…!?閣下!至急アルビオン艦隊に砲撃の中止を!」 「…無駄だ。我々は奴らに嵌められたのだ!」 「では、応戦ですか?」 「我々は浮き足立っている…準備万端のアルビオン艦隊と浮き足立った我々では勝ち目はあるまい。降伏か撤退しかあるまいが…降伏は性に合わん、逃げる事にしよう」 続けざまにレキシントンから砲撃が撃ち込まれ各艦が被弾していく。旗艦は今のところ健在だが何時撃沈させられるか分かったものではない。 「伝達。『旗艦ガ最後列ニ残リ味方ノ撤退ヲ援護スル。各艦艦長ノ裁量ニヨッテ戦域ヲ離脱セヨ』…以上だ」 メルカトール号より右舷大砲が砲撃を行うが射程外からの砲撃だ、届くはずもない。 放物線描き数発着弾した砲もあったが、そんな勢いの無い砲弾ではレキシントンの分厚い装甲に阻まれ殆ど被害らしきものを出してはいない。 メルカトール号同様に残り撤退を支援する艦もあったが、次々と被弾し撃沈させられていく。 「『ヴァレンシュタイン』大破轟沈!『ホーランド』沈みます!」 次々と僚艦が沈められていくが、旗艦は各所に被弾しながらも未だ健在であり、何とか踏みとどまっていた。 しかし、火災を起こし火薬庫に引火するのも時間の問題である。 「…味方は脱出できたか?」 「『ロイヤル・ソヴリン』の砲の射程が思いのほか長かったため…脱出艦艇は約4割程度かと…その内、何隻が無傷かは…」 「…全滅よりはマシといったところだろう、本艦も退避命令を……」 そこに、トドメの砲撃が撃ち込まれ船体が大きく揺れた。 「…間に合わん…か、旗艦に乗り合わせた者には悪いことをしたな」 ラ・ラメーとフェイヴスが向かい合い敬礼をすると同時に甲板がめくりあがりメルカトール号が爆沈した。 「思いの他、敵艦隊の行動が早かったですな」 被弾しながら射程外に離脱していくトリステイン艦隊を見送りながら、上陸作戦の指揮を取るワルドが呟いた。 「の、ようだな子爵。だが、旗艦を初め主力艦をほとんど撃沈したのだ。 すでに勝敗は決した。…しかし、制空権を抑えておきながら、あの作戦にレキシントンを使う必要があるのかね?」 「恐らくガンダールヴも出てくるでしょう。ヤツの奇妙な魔法ならレキシントンがいくら巨大でも数分で制圧されますな」 「それほどのものかね…」 「それに、私が新たに召喚した使い魔ならばレキシントンなど無くとも、十分です」 そこにレキシントン号の艦上から万歳の叫びが聞こえボーウッドが眉をひそめる。司令長官のサー・ジョンストンまでそれに混じっているのが拍車をかけた。 「トリステインの司令長官は、乗艦を犠牲にしてまで味方の撤退を支援したというのに、我が方の司令長官がアレではな…」 戦力そのものの差と奇襲という戦術上の優勢、それが無ければどうなっていたかと思い、思わずそう呟く。 「艦長、彼が来たようです。御紹介した方がよろしいですかな?」 「ああ、頼む」 扉が開きボーウッドが視線をそちらに向けると、アルビオン艦隊司令長官よりも長官らしい佇まいの人影が入ってくるのを見た。 トリステイン艦隊 ― 大破轟沈6割 残存艦艇中 中破4割 小破5割 健在艦艇1割 司令長官ラ・ラメー以下旗艦『メルカトール』号乗員全員『戦死』 閃光のワルド ― ザ・ニュー使い魔! 戻る< 目次 続く
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珍妙な帽子を被った男が机のケーキを見て何やら喚いていた。 「なんで残り4個なんだよクソッ!なんて縁起悪ィんだ!」 「それなら最初から3個にしておけばよかったじゃあないですか、ミスタ」 「そうなんだがよぉーー……まだ、クセが抜けきらねーで、つい5個買っちまうんだよ……」 ブチャラティ。アバッキオ。ナランチャ。フーゴ。 かつて5人だった仲間は、新入りの……現在、パッショーネのボスであるジョルノを除いて全て居なくなってしまったのだ。 「そうですね…ですが、彼らの意思は僕達が受け継いでいるんです。それに……フーゴだって時間が経てば戻ってきてくれますよ」 『サン・ジョルジョ・マジョーレ島』で組織を裏切った時、唯一その場に残ったフーゴだが、彼なりに協力をしてきてくれていた。 ディアボロを倒し組織を掌握した際フーゴが戻ってきてもいいように体制を整えていたが、フーゴ自身がそれを許さなかったようで戻るには至っていない。 やはりブチャラティ、アバッキオ、ナランチャが死んだ事に負い目を感じているのだろう。 「ミスタァーーーウエエエーーーンハラヘッタヨォ~~~~~」 「おいおい、だから言ったろうがよォ~~~4は縁起が悪りーんだ我慢しろって…!」 「モウガマンデキネーーヨミスタァーーーー!クレークレーーー」 ミスタがピストルズ達をなだめているが、収まりそうにない。 それを見たジョルノだが、薄く笑みを浮かべ言った。 「好きにして構いませんよミスタ。今日はもうやる事は特にありませんからね」 「お!?そうか、悪りーなジョルノ!」 「アギャギャギャギャ!メシ食イニイクゾーーーー!」 「何かスゲー美味いトマトを使った料理を食えるとこがあるらしいんだが、オメーも行くか?」 「そんな店ができたんですか?残念ですけど、トリッシュがこっちに来るらしいんで、一人で行ってきてください」 「出迎えってやつか。パッショーネのボスもトリッシュだけには敵わねーらしいな」 「そういう事です」 「日本でやってたクオーコ(コック)が里帰りしてきて、知り合いの店手伝ってる間だけらしいから、行くならオメーも早い方がいいぜ」 そう言うとアギャギャギャギャと騒ぐピストルズ達を連れミスタがドアを開け外に出て行った。 「さて、店はこっちだったな」 軽い足取りで歩くが、何かに正面からぶつかった。 「うぉぉぉ!いてて…なんだじーさんじゃあねーか。立てるか?」 「あ……ああ、スイマセンがああああ、手を貸してくれないかなあああああ」 倒れている老人と、立っているミスタ。 面倒だったが、状況的に見て放置すると色々と誤解を受けかねない。 「しょうがねぇな……ほらよ。俺は今から飯食いに行くんだから早くしてくれよ」 「それはそれは……」 老人がミスタの手を両手でガッシリと掴み立ち上がるが…次に言った言葉はミスタをブッ飛ばすに十分だった。 「だが、お前は、もう何も食えないさ……ミスタ」 あまりにも覚えのある状況と台詞。 唯一自分が、何も出来ずに敗北した相手を思い出すが、ヤツはブチャラティに列車から突き落とされ死んだはずだ。 だが、これは……! 「て、てめェーーーー!まさか!!」 片手で銃を抜き老人に向けるが、あの時と同じなら間に合わない。 そう思い、何とかジョルノに遺す術を張り巡らせたが、『それ』はやってこなかった。 「はて……?何か言いましたかなああああああ?」 「と、とぼけるんじゃねぇーーーーーッ!オメー今、確かに俺の名を言ったじゃあねーか!」 「ここ最近、曖昧になりもうして、よく覚えとらんのですよおおおおお」 銃を突きつけられている事にも関わらず変わらないペースで老人がそう答える。 周りも騒がしくなってきたようだ。老人に銃を突きつけている男。どう考えても分が悪い。 「チッ!」 手を振り解くと、その場から逃げるかのように走り去った。 「ジョルノォーーーーーーーーーーーー!!」 「ずいぶん早かったですね。トリッシュならもう来てますよ」 扉を蹴破らんばかりに入ってきたミスタに少し眉を潜めたが、まぁ何時もの事だと思い大して気にしていないジョルノだったが 次にミスタが言った台詞には、さすがに反応せざるをえなかった。 「暗殺チームの……確か……そうだ!プロシュートが生きてたんだよッ!!」 「……それは無いはずですよミスタ。見間違えじゃないんですか?」 「いや、マジだって!」 「考えてみてください。ブチャラティから聞いただけですが、150キロの列車から突き落とされたんですよ?万が一生きていたとしても再起不能なはずです」 なおも食い下がるミスタに少し辟易したのか、ジョルノが何があったのか聞き出す事にした。 「とりあえず、落ち着いてください。何があったんですか?」 さっきあった事をミスタが説明をするが、当のジョルノは何かこう…何時もと変わらない表情だったが、何かを諦めたような顔をしている。 「つまり手を掴まれて、あの時と似たような事を言われたからそうだって言うんですか?」 「オメーは直にあいつを相手にしてねーから分からねーだろうが…!ありゃマジで本人だぜ!?」 必死になってミスタがそう力説するが、ジョルノは醒めた目でミスタを見ている。 「……ミスタ。確かに僕はパッショーネに入団する時ブチャラティに『やるのは個人の勝手』と言いましたが……貴方が手を出すとは思っていませんでしたよ」 「……?何が言いてーんだ?ジョルノ」 何かこう、ガッカリしたような口調だ。 「腕を見せてください」 「お、おう」 腕を見せるが、ジョルノは腕の真ん中あたりを凝視している。 「……痕はありませんね。吸引系ですか?」 「ジョルノ…オ、オメーまさかとは思うが……!」 「マリファナかコカイン……どのルートを使って手に入れたんですか?僕が組織を乗っ取ってから麻薬チームは解散させたはずです」 「薬じゃねぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 その日最大の叫びがその場に響いた。 「大声出して何やってるの?」 奥から出てきたのは、ディアボロの娘、トリッシュだ。 「ええ、ちょっとミスタが麻薬を…」 「違うっつってんだろーがッ!!」 「……違うんですか?」 「たりめーだ!」 「何があったのよ」 状況を知らないトリッシュにさっきあった事を説明したが、似たような反応だ。 「いいですか?さっき手を両手で掴まれたと言いましたよね?」 「ああ、そうだぜ」 「ブチャラティが言うには、もう一人のスタンドを利用してスティッキィ・フィンガースを叩き込み、彼の右腕を切断して突き落としたんです」 「ブチャラティは嘘を見抜いても嘘を付く理由は無いから、そのとおりなんでしょうね」 「時速150キロで地面に激突したんです。生きていたとしても 僕のゴールド・エクスペリエンスで部品を作ったのならともかく、そんな手が無事にくっつくはずがありませんよ」 「で、でもよォーーーー!確かに『だが、もう何も食えないさ…ミスタ』って言ったんだよそいつは! 銃を抜いちまって騒ぎになったから、それ以上追求できなかったけどよォーーーー」 「……それだけの情報なのに街中で銃を抜いたんですか?…しかも老人相手に」 「スタンド使いに襲われたんだから当然だろうがよ」 「……トリッシュ」 「……ええ、分かったわ、ジョルノ」 ジョルノに促されトリッシュが電話を取り、どこかに掛け始める。 「……どこに電話してんだ?トリッシュ」 「ミスタ、ちょっとそこに座っててください」 ミスタが椅子に座ると同時に、ロープを持ってきたジョルノがスタンドで手早くミスタを縛った。 「な、なにすんだてめェーーーーーー!」 「じっとしててください。時間がかかるかもしれないんで」 「ト、トリッシュ!オメーも何か言え……」 トリッシュの方を見るが、その話し声を聞いて愕然とする事になる。 「……ヴェネツィア総合病院ですか?……ええ、そうです。精神科のベッドの予約を一つ……名前は『グイード・ミスタ』でお願いします」 「な、なにやってムゴォ!」 そう叫ぶミスタをジョルノが手早く猿轡で黙らせる。 「心的外傷後ストレス障害……PTSDですね。さっさと入院して良くなってくださいよ」 「ウンガァァァァァアアア(違うつってんだろーが!)」 「何です?聞こえませんよ。そんなに不安なら氷でも持っててください」 「ウンゴォォオオオオ(オメーが話せないようにしたんだろーが!)」 グイード・ミスタ―ヴェネツィア総合病院 精神科に強制入院 スタンド名『セックス・ピストルズ』 簀巻きにされ、どこかに運ばれるミスタを建物対面のオープンカフェに座った壮年の男が薄く笑いながらそれを見ていた。 「ああはなるとは思ってなかったが…ま、恨むなら信用されてないテメーを恨めってこったな」 そして机の上の紅茶を口に運ぶが、一口飲んで顔を顰めた。 「…………不味い」 どうにも合わない。以前ならそうでもなかったろうが、『向こう』に居たせいで味覚が変わったらしい。 貴族用の茶の葉。ネアポリスのある意味淀んだ水とは違う天然水。 どう見ても、味に格段の違いがある。 金を払わずに店を出るが、その時『青年』になっていた男は誰にも気付かれる事無く外に出ることが出来た。 再び自身を多少老化させ懐からサングラスをかけ街を歩く。 髪も結構伸び、それを降ろしているため見知った顔に見られたとしてもバレる事は無いだろう。 「さて……どうすっかな」 ミスタにちょっかい出したとは言え、現在のボス―ジョルノを相手にする気はさらさら無かった。 「まさか、あの新入りがボスを倒してるとはな」 この5日間、組織の事を調べたが、ボス―ディアボロが倒されジョルノにパッショーネが乗っ取られている事を知る。 ディアボロが相手なら何があろうとも暗殺を慣行するが、ブチャラティの新入りがボスの座に収まっていると知りそんな気は雲散していた。 まして、暗殺チームは壊滅しているのだ。結末を知り心に納得する事はできたが、やる事が無くなっていた。 良く言えば自由。悪く言えば暇。 ちなみにゼロ戦は発見された後、日本に運ばれたらしい。 大戦中の戦闘機が稼動状態で見付かったのだ。ニュースにもなっている。 気付いた時は燃料ギリギリでルーンも消えていたため危うく墜落しそうになったのだが、操縦法は辛うじて覚えていた事で何とか建て直し着陸を慣行する際にメローネが「後輪からディ・モールト優しく着陸するんだ。前輪から着陸すると教官に怒られるからな!」と言っていた事を思い出し、何とか墜ちる事無く戻る事ができた。 航空機の着陸の基本だそうだがゲームの受け売りだ。タイトルは『パイロットになろう2』 「国外(そと)に出るか」 イタリアでは見知った顔が多すぎる上に、それなりに襲われる理由もある。 金はあった。ポルポの隠し財産ではないが、ソルベとジェラードが殺された日から緊急用としてチーム全員が出し合い貯めた金が一括され隠されていた。 「悪りーな、オレ一人で使っちまう事になりそうだが……先に逝ったオメーらには必要ないだろ?」 納得させるようにそう呟くと、さっそく行動すべく動き出していた。 草原に立つのは桃赤青の三色。後、太陽光を反射するのが一つ。 「まだ一週間しか経ってないけど…ホントにもういいの?ルイズ」 「もちろんよ、神聖で美しく、そして、強力な……あいつに負けないぐらいの使い魔を呼ばないといけないんだから」 二日程引き篭もっていた事を知っているため、それなりに心配し聞いたキュルケだが、そう答えるルイズを見て、結構成長したわねと素直に感心していた。 かくいう本人も帰ったと聞かされた時は小一時間ほど呆然としていたのだが、立ち直りは早かった。 学院に戻ってきたシエスタにも話したのだが、ゼロ戦が日食の中に消えていく様子を見て、もうスデに知っていたようだった。 何時もと変わらない笑顔だったが、どこか寂しそうに見えたのはルイズだけではあるまい。 表情を崩さなかったのはタバサぐらいか。 ちなみにコルベールはゼロ戦が消えた事にもんのスゴイショックを受け徹夜の影響もあり3日程寝込んでいた。 ストレングスが沈黙した後、戦意喪失したアルビオン地上軍であったが、『レキシントン号だッ!』やストレングスの砲撃でトリステイン軍も一杯一杯だった。 両軍疲弊の半ば引き分けのような形だったのだが、帰る手段を失ったアルビオン軍が降伏するという形で終結した。 戦勝パレードの後に戴冠式も行われアンリエッタの婚姻も消し飛んだらしい。 なにせ、トリステイン単独で精強なアルビオンを破ったのだ。何もしていないゲルマニアに対し強気に出る事ができるのは当然だ。 「では、ミス・ヴァリエール。サモン・サーヴァントを」 コルベールがそう促すとルイズが一歩踏み出し詠唱を始める。 あの時とほとんど同じだが、ただ違うのは指に嵌めた水のルビーと虚無の使い手であるという事。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよ 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ!わたしは心より求め、訴えるわ…我が導きに、答えなさい」 杖を振り下ろすと……爆発が起きた。 『イタリアで発見された、旧日本海軍所属『佐々木武雄少尉』が登場していたと思われる零式艦上戦闘機が、修復を終え展示され……』 街頭テレビのニュースがそう伝える街を、髪を整えスーツでキメたプロシュートが歩いていた。 言葉は分からないが、映像を見る限りあのゼロ戦だと判断したようだ。 二日経ち場所は、ある者は魔都と呼び敬遠し、またある者は聖地として崇める混沌の地。かの有名な秋葉原。 外国人ですら知れ渡っているため、外人は珍しくはないが…どう見ても場違いというか、ぶつかったりしたら狩られそうなので皆避けていた。 「メローネのヤロー……よくこんな場所に入り浸ってたな……」 つくづく感心する。訪れた理由は、ただ単にメローネが入り浸ってた場所に興味があったからだ。 訪れてから結構後悔したが先に立たず。 メイド喫茶なるものを発見した時なぞ、敵スタンドに襲われた時よりブッ飛んだ。 元ギャングと混沌の街『秋葉原』。カルチャーショックを通り越してデカルチャーである。 当面の定住先として日本を選んだのは幾つかあるが、入国関連の審査が甘い事と簡単に身分を偽造できるからだ。 その気になればイタリア語講師で食っていけるだろう。 「なんでメイドが居るだけで、あんな馬鹿高い金取られるんだ?理解できねー」 まぁ店先で立っていた、セミロング黒髪メイドを見た時、シエスタを思い出したのだが。 「ま……もうオレの関われる事じゃあねーな」 行ける場所なら、する事が無くなった以上、ペッシようなあいつらの面倒見てもいいとは思うが、もう関わりの無い事だ。 金はまだまだあるとは言え限りがある。とりあえず食っていかねばならない。現実的な問題は山積みだった。 「う~~~~パソコン、パソコン」 今、修理が終わったノートパソコンを求めて全力疾走している俺は高校に通うごく一般的な高校生 強いて違うところをあげるとすれば出会い系に興味があるってとこかナ――― 名前は『平賀才人』 そんなわけで秋葉原にあるPCショップにやってきたのだ 修理が終わったパソコンを受け取り、ウキウキ気分で家路に着く途中、思いっきり人にぶつかった。 「いってぇな……前見て歩けよ……」 余所見していたのは思いっきり彼である。だが、せっかく修理したパソコンが壊れては洒落にならないという考えからそんな言葉が出た。 ……出たのだが正面を見て後悔した。 外人だ。それもこんな場所にも関わらずブランド物っぽいスーツでキメている。 彼の貧弱ゥな想像力は場所に関わらずスーツ装備=マフィアor某機関の工作員という結論に達したのだった。 そして次に取った行動は―― 軽くデカルチャーを感じながらモーゼの如く街を歩いていたのだが、人にぶつかった。 前を見ていないわけではなかったが、デカルチャーを受けていたため気付けなかったようだ。 もっとも、相手も前を見ていないようだったが。 現役時代なら、蹴りが飛ぶとこだがここは日本。入国管理はザルだがイタリアと違い警察は優秀な方である。賄賂も効かない。 ベイビィ・フェイスとは違うが携帯用のパソコンを庇うようにして少年が倒れていたので手を顔の前に差し出すと…恐ろしい速度で土下座された。 「スイマセン!スイマセン!スイマセン!スイマセン!スイマセン!スイマセン!」 必死だった。なにせ謝まるために起きようとした瞬間、腕が伸びてきて目を指でえぐろうとしてきたのだからッ! 17年生きてきてヤクザな世界の方々とは一切関わった事が無いので、ちょっと勘違いしているご様子。 「目はホント勘弁してくださいッ!いや、できる事なら全部勘弁してくださいッ!」 相手が外人であるという事も忘れ日本語で言いながら、『組織の工作員』だの『殺し屋』だの『血も涙も無いマシーン』だの色々な想像をしながらなおも地面に頭を打ちつけるかのように土下座をする。ハッキリ言う。スゲー目立っている。 ギャラリーも出来始めているが誰も助けようとはしない。東京砂漠だ。この時ばかりは馴染んだこの街を恨んだ。 「なんだ?このマンモーニは……」 目の前には叫びながら思いっきり土下座する少年。 日本語でなにか言っているが、ポーズと照らし合わせると謝っているのだろうと思う。 当然の事だが、目をえぐる気なぞ無い。ただ単に手を差し出しただけだが、勘違いされたようだ。 「腑抜け野朗がッ!なんだ?そのザマは!?ええ!?」 ボギャア!ドカッ!ボゴッ!ボゴッ!ボゴッ! (ペッシならこうだな…) 少年を踏みつけていたようだが、どうやら想像だったようだ。 説教したい衝動に駆られていたが、その姿が同じ黒髪のもの凄い勢いで人に謝り倒すメイドと被った。 「日本人ってのは皆こうなのか?」 ちょっとばかし偏見だが、出会った二人がこうなのだから仕方あるまい。 ギャラリーも出来てきたので面倒ごとになる前にカタを付ける事にした。 「スイマセン!スイマセン!スイマセン!スイマはぐぉ!」 土下座していると、頭に衝撃。なんだ、凶器か、凶器で殴られたのか。 バールのようなモノ。という凶器名が思い浮かんだが、よくよく考えれば衝撃が軽すぎる。 恐る恐る顔を上げると、その外人が呆れたような顔で犬を追い払うかのような手をしながらこっちを見ている。 「い、行っていいって事ですかね……?」 当然日本語だから返事は無い。 恐る恐るその場を離れる。走らない。走りたいけど走ったら逃げたと思われ何か追われそうだったからだ。 ゆっくりと歩きながらその場を離ようとした時『マンモーニ』という単語だけよく聞こえたのだが イタリア語なんぞ知ったこっちゃあないし怖かったので気にせずその場を離れる事にした。 「このマンモーニが」 恐る恐る、背を向け歩き出した少年に向け、そう言い放つ。 歳は分からないが、10代後半といったとこだろう。 その時スデにギャング世界に片足突っ込んでいたオレ『達』に比べてなんっつー平和な世界だと思ったのだが本来これが正しい世界なのだろうとも思う。 スーツのポケットに手を入れると何かある感触。 取り出してみると少しばかり驚いた。 「ヤッベ……そのうちオレが渡すと言ってたが……返すの忘れてたな」 手にするは大きなルビーが付いた指輪。風のルビーだ。 こちらの世界では盗品というわけではないから裏で売ろうと思えば、かなりの高値で売り捌ける。これからの事を考えるとそうしてもいい。 だが、そうする気は無い。 「持ってきちまったもんは仕方ねーな」 手で弄びながら歩く。さっきの少年と同じ方向だ。 しばらく歩いていると、正面に光る鏡のような物体を見た。 「……マン・イン・ザ・ミラー、イルーゾォか!?」 暗殺チーム、鏡の中のスタンドと本体の名前が出る。 戻った時、新聞を漁ったりして仲間の墓は確認したのだがイルーゾォだけ確認できなかった。 もちろん状況的に見て、その可能性は低い。 実際、パープルヘイズでドロドロに解けて死体が残らなかっただけだが、一瞬でもそう思わせるには十分だ。 思ったらなら行動する。スデにそちらに向け走り出していた。 先ほどのウキウキ気分から一転。かなり凹んだ感じで歩いていると何か嫌な予感して後ろを振り向いた。 「ok。これはドッキリだ。ドッキリテレビだな?皆して俺をハメようとしてるんだ。だからさっき誰も助けてくれなかったんだ」 言うまでも無いが軽い現実逃避である。 だって後ろを振り向けば、さっきの才人の中では『工作員』『殺し屋』『殺戮マシーン』と認定された外人が後ろに┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨という文字が浮き上がらんばかりにこっちに走ってきたのだから。 「最近ネタが無くてまた始めやがったな!カメラはどこだ!?」 必死こいてあたりを見回すが当然そんなものは無い。 だが、前方の光る鏡のような物体に気が付いた。 「カメラはアレだな!」 そう思った瞬間走り出す。これがカメラじゃなかったら死ぬ。 「もうホント、今時ドッキリなんて流行らないからやめろって!」 そういう思いに支配されていた彼は迷うことなく、その物体に触った。 「あのマンモーニ……!鏡に半身を…やはりイルーゾォか!」 あの少年をイルーゾォが襲う理由は分からないが、元暗殺チームだからそういう仕事を続けているのだろうと思った。 別段、かれこれ言うつもりは無かったが、自分より先に死んだと思っていたイルーゾォが生きている。 鏡の中の世界は許可された物しか通る事はできないが、向こうからでもグレイトフル・デッドかこちらの姿を見れば分かるはずだ。 「グレイトフル・デッド!」 スタンドを発現させ少年の腕を掴もうとする。 そんなもので止まらないというのは当然承知の上だ。 これで少なくともグレイトフル・デッドの存在には気付く。 だが、腕を掴もうとした瞬間、どこからか虹のような光が出ているのを見た。 腕を掴み発生源を確認すると発生源は握っていた右手の中だ。 「なんだ……?こい……つ……がッ!」 向こうで喰らった『ライトニング・クラウド』程ではないが似たような衝撃を受け意識が遠くなる。 「なん……だ……!?マン・イン・ザ・ミラー……じゃあ…ねぇ……!」 迂闊だったと思うが、スデに遅い。 ただ、意識が途切れる瞬間、前にもどこかで似たような感覚を受けたと体が覚えていた。 「……なんでまた爆発なのよ」 「ま、そう簡単にいかないってことよ」 「臥薪嘗胆」 虚無に目覚めたのに、またハデ爆発を起こした事に凹むルイズと、虚無に目覚めたことを知らないキュルケとタバサが何時の事という感じで流すが煙が薄くなるとコルベールがちょっと『ハイ』になりつつそっちを見ていた。 見覚えのありすぎるシェルエット。この世界では届くことの無い技術の塊。 「また、これを再び見れるとは思ってもいませんでしたぞ!ミス・ヴァリエール!」 ゼロ戦がそこにあった。 「なんで……?プロシュートと元の世界に戻ったんじゃ……」 そこまで思ってハッとした。 元の世界に帰ったはずのモノが再び現れたなら、乗っていた本人も居るのではないかと。 ゼロ戦の周りを捜すと影に脚が見える。 期待と、また呼びつけた事に殴られるんじゃないかという二つの思いが交錯する中、その脚の先を覗き込むと黒と白の見た事の無い服を着た、自分と同じぐらいの歳の少年が倒れていた。 「……また平民かしらね」 キュルケがルイズを覗き込む。声の調子がちょっと下がっているあたり期待していたのは同じらしい。 以前のルイズなら、ただの平民と判断しロクな扱いをしなかっただろうが、今は違う。 奇妙な事だが…… 悪事を働き、法律をやぶる『ギャング』、その中でも特に忌諱されるべき存在の『暗殺者』がルイズの心を成長させたのだ。 もう、『ゼロ』などというイジけた目つきはしていない… ルイズの心には、まだ少しだけだがさわやかな風が吹いていた…… 自分のやった事には後悔せず前向きに受け入れていこうという気持ちが多少なりとも目覚めていた…… だから、この少年が目を覚ました時も見下したような目はしていない。もちろん使い魔にする気ではあったが。 「あなた、名前は?」 「ってぇ……俺?……俺は平賀才人」 その瞬間、黄金のような風がその場に流れた。 ←To be continued 戻る< 目次 続く
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「………きー」 突如武器屋の中でどこからか声がした 何故に武器屋なんぞに居るかというと シエスタに連れられ厨房裏で食事を取りマルトーから自分が平民達から 『我らの剣』などと言われている事を知った後食堂でまたしても暗い|||線を作っているルイズを発見した。 そりゃあもうその場にプッチ神父がいたら間違いなくハイウェイ・トゥ・ヘルを選択するだろうと言わんばかりの状況だッ! 「…朝から調子の上がり下がりが激しいヤツだな」 「その原因作ったのはあんたじゃないのよぉ…」 もう今にもヤケ酒大会Part2に発展しそうな状況を見たキュルケが昨日の二の舞は御免だと別の話を切り出す。 「ほ、ほら、今日は虚無の曜日なんだからダーリンに城下街を案内してあげたいんだけど」 「頼むからその呼び方は止めろ…プロシュートでいい」 「それはお互い名前で呼び合う関係になったって思っていいのかしら♪」 「主人に話し通さずに何やってんのよツェルプストー!」 魔法学院名物『ゼロ』vs『微熱』の口喧嘩が開始され辺りが騒がしくなり五分程時を加速させた結果―― 「なんですって!」 「なによ!」 もう内容がプロシュートと全く関係ない話に発展している。 (幹部連中がこれと同じとは思いたくねぇがリゾットもよく胃に穴が開なかったな……メタリカか?メタリカで塞いでんのか?) 当の本人はチーム一の苦労人を思い出し同じ持続力Aでもこうも耐性が違うものかと感慨に浸っていたのだが。 「ったく…何やってんだオメーらは!…だが、街は見ておきてぇ案内頼めるか」 もちろん真の目的は万が一の逃走経路の確認にある。 「もちろんよプロシュート」 「ちょっと…使い魔が主人に断りもなく勝手に何やってんのよ」 「爺に事の次第が分かるまで同じ行動するように言われてるからな。オメーも一緒に来るに決まってんだろーが」 「それじゃあ、あんたが私に合わせるのが当然じゃない!」 「着いてこねーのは勝手だがどうなるかまでは責任取らねーからな」 「……分かったわよぅ」 さすがにオスマン直々の言葉であるからには逆らうわけにはいかない。 「タバサー、シルフィードお願いねー♪」 親友に送り迎えを頼もうとするが 「虚無の曜日」 そう短く言い放ち本に目を戻された。つまりまぁ断られたという事だ。 「仕方ないわねぇ…」 そんなこんなで馬に3時間程乗って城下町に着きスリをグレイトフル・デッドで捻り上げつつ案内を受け最後に着いたのは武器屋というわけだ。 スタンドを備えてはいるがもちろん暗殺者だけあってある程度の武器は扱いなれている事もあり立ち寄ったのだがそこで 「……きー」 という声を聞いたのだが周りには店主とルイズとキュルケしか居ない。 「…にきィー」 また聞こえたがやはり他三名しか居ない。居ないのだがその言葉が自分にとって聞きなれた単語であったような気がした。 「…何か言ったか?」 「何も言ってないわよ」 だが、直後プロシュートを驚愕させるに十分の言葉が聞こえたッ! 「兄貴ィーーー」 「ペッシかッ!?」 短くそう叫び声が聞こえた方向に向き直るがあるのは積み上げられた剣の山だ。 「ペッシがここに居るわけねぇが…何だ?一体」 「ここだぜ兄貴」 声のする方向を凝視する。一本の錆がある薄手の長剣がそこにあった。 「剣が…話しただとッ!?」 さすがのプロシュートも剣が話すという超事態には驚きを隠せないッ! 「こんな所にインテリジェンスソードがあるなんて珍しいわね」 「意思を持つ刀ってのは組織の情報網に過去一つあったってのを見た事はあるが…」 スタンドの可能性を考慮に入れたが話を聞く限りこの世界にはそういう剣は結構あるらしいのでその可能性は除去しておく。 少しばかり気になる事もあったのでその『剣』と話す事にした。 「テメー…何でオレを兄貴と呼んだ?何故オレを『知って』いる?」 「この辺りじゃ貴族に決闘を挑まれそれを返り討ちにして殺した見たことも無い服を着てる平民が居るって噂は知らねーヤツはいねーぜ兄貴ィ」 情報統制というものは現代においても完全に行うことは不可能だ。 どこからか水道管の水漏れのように漏れだしてしまう。 もっともその情報統制を恐怖と暴力によって完璧に行っていたのが『パッショーネ』のボスであるのだが。 この中世レベルのハルケギニアならその手の噂が広まるのは当然だった。 「フン…オレを知っている理由は分かった。だが兄貴ってのは何だ」 「そりゃあその動きを見れば兄貴が一級のプロのてのが理解できるぜ」 「デル公がお客様相手にそんな話し方するなんざ明日は雪だなこりゃあ…」 そんなこんなで剣をいじくり倒していると剣がまた話始めた。 「兄貴はスゲーや!『使い手』だったのか」 「『使い手』…だと?」 「俺を買ってくれ」 (オレにはグレイトフル・デッドがある…攻撃に関して言えば必要ねぇが… 情報面では使えるかもしれねぇな、何より『使い手』ってのが気になる) 「親父、こいつの値は?」 「いい加減厄介払いしたいんでエキュー金貨百枚で結構でさ」 見えないようにギーシュの遺産をグレイトフル・デッドで数える。 「ギリギリってとこか…」 カウンターの上に剣と金貨を置こうとするが横槍が入った。 「ちょっと…剣なんか買ってどうするのよ?使った事あるの?というかその金貨は何?」 「刃物なら扱った事はある。金は出所を聞きてーのか?」 「……いい、聞きたくない」 聞いたら多分…いや、絶対不幸になる。聞いちゃダメよルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! と心の中で堅く誓う。 だが、そんな心中を無視して別の方向から横槍が入ってくる。 「彼にそんな錆た剣を持たせるなんて…神経がどうかしたんじゃあない?」 「…プロシュートがこれ選らんだんだし関係無いじゃない」 「私ならもっと立派な剣を選んであげるけど…仮にも貴方の使い魔なのに彼に出させるってのはどうかと思うわよ?ヴァリエール」 「仮にもってどういう事よツェルプストー!私だって剣ぐらい買ってあげれるわよ!」 魔法学院名物『ゼロ』vs『微熱』第二ラウンド『城下町武器屋』よりお送り致します。 金だけ回収し無言で店の外に出るが―― 「ここに居るとペッシがマトモに見えてくるな……」 この世界に来てリゾットの気苦労の多さが初めて理解できたと本気で思っていた。 戻る< 目次 続く
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気がつくと、ここに立っていた。 自分の周りを覆う煙が晴れ、視界が広がる。 抜けるような青空の下、草原の中。 周りを見渡すと、奇妙な一団が自分を見ている。 「アンタ誰?」 声がして気がつく。 小さくて気付かなかったが、ピンク色の髪をした少女が目の前に居た。 「ここはどこだ?」 「ルイズ、平民なんか召喚してどうするんだ?」 「ゼロのルイズは失敗の仕方も一味違うねぇ!」 周囲の笑いと反対に、目の前の少女は声を荒げる。 「ち、ちょっと間違っただけよ!」 しかし、笑いは収まらないばかりか、いっそう大きくなる。 「おい、ここはどこなんだ?」 再び、少女に問いかける。 「うう、うるさいわねぇ平民の分際で! 質問に質問で返すなって言葉を知らないわけ!?」 「質問?」 「そうよ! 一体アンタ誰なのよ!!」 笑われて腹を立てているのか、少女はヒステリックにがなりたてる。 「オレか? 俺の名前は……」 ん? 「……オレは誰だ?」
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ヴァン・ラインハルト(Van・Reinhard) 年齢:16 学年/職業:高1/学生 性別:男 レベル:- メイン:戦士 サブ:拳闘士 エクストラ:探偵 追加サブ: 種族:人間 参戦回数:0回 学園:総合学園 素行:E 身長 173cm 体重:66kg イメージCV:遊佐浩二 PL名:ゼットン イメージ(ゼロ)EXCITE/Armour Zone/Cry for me,Cry for you イメージ(ヴァン)Errand/Re:birth/Just Fly Away イメージ(共通)Action-Zero/DIE SET DOWN/W-B-X ~W-Boiled Extreme~ 「"俺達"の運命は、俺達が決める、邪魔すんじゃねぇ!」 人格 面倒臭がりだがなんだかんだ活発的。 『探偵はハードボイルド』とかドラマ見て憧れてたりするが口を開けば台無しになる。 "普通の学生"が分からず、同級生の真似事を続けた結果、何かと煩悩に赴いた行動が目立つようになった。 来歴 物心ついた時は既に孤児院で育てられ、同じ院内の子達と育てられる。 館浜市内、宝条中学校を卒業する中、ウィルス実験によるパンデミックにより意識不明に陥り1年間の療養を余儀なくされた。 半年間植物状態となり意識がなく、目が覚めた時にはウィルスであるゼロに主体を奪われる事に。 身体は動かせないが、ゼロの視覚、聴覚など五感を通して状況を共有する事は出来ていた。 精神的には別個となっている為、口に出す事は把握できていても本心までは分からない。逆も然り。 最近は感染侵食により、意思疎通もより明確に出来るようになった。 相方を通して聞く事も、それぞれの意志で話を聞かせないようにする事も可能。 ゼロ-ウィルス(Xero-Virus) 「最後まで付き合うよ、相棒。」 外見 青がかった髪が唯一の特徴、という位で他は平凡、というより無難な身なりをしている。 人格 大人しめでマイペース。 頭は回る方で学力もあるが、サボリの常習犯。 普段は晴れた時は屋上で、天気が悪い日は屋上前でダラダラと過ごしている。 来歴 館浜市にある宝条中学校にて生成。 『身体の持ち主』であるヴァン・ラインハルトに感染し、現在主人格として普段の学校生活を送っている。 感染進行を抑える為、『療養と執行委員を理由に屋上でのサボり』を名目に暖かい日光と新鮮な空気を出来る限り浴びている。 ヴァンの意識を奪い始めて約1年弱がゼロ自身の記憶である。 それ以前の記憶はなく、素体の魔力、精神を侵食、吸収する事で知識を得ていた。 ヴァンと入れ替わる際は、入院時から世話になってる病院付属大学教授の橘光より受けた弾丸を持って入れ替わりを行う。 白い弾丸がゼロ→ヴァンへ、茶色い弾丸がヴァン→ゼロへの切換の目印。 ただし、ヴァン→ゼロについては、時間経過でも勝手に戻ってしまう。 また、撃つ箇所によって自由に動かせる割合が変わってくる為、普段は脳を撃つように銃を自らに当て、引鉄を引いている。 +宝条中学校は現在廃校となっている。 表向きは中学校だが、その実は医療薬研究施設。 学内の生徒、学校関係者はほぼ実験により発生したパンデミックにより半ウィルス化。 普段は実体は見えず、緩やかに侵食が進んでいる。 調査を経てゼロは『ウィルスの根絶』、ヴァンは『全ての事態の解決』に向けて動いている。 +参加セッション +友人関係 PickUp キャラクター情報 +キャラクターメモ ■キャラ 名前(きゃら なまえ) 《基本データ》 年齢:○○歳 性別:?? 身長:ないしょcm 体重:ひみつkg ML1 /HP10/MP10/LP5/行動値5/信仰0 筋1/知1/器1/敏1/感1/精1 《判定など》 命中2D+1/物攻2D+0/射程1~1/魔法2D+1/魔攻2D+0/回避2D+2 探索2D+2/危機2D+1/識別2D+1 ※鑑定等スキルが必要なものは除外 物理防御6/魔法防御5/結界強度2 《スキル》 [パッシブとか] [セットアップとか] [マイナーとか] [メジャーとか] [その他とか] 《所持品1/3》 携帯電話*1 《ダメージロール》 ■技能
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『老化執行中 脱出進行中』 「てめーにも…覚悟してもらうぜ…」 その言葉と共にワルドの腕を掴む手に力が入る。 「うぉぉぉぉぉおお!我が風の偏在ィィィイイイ!最後の力を振り絞れェーーーーーーーーッ!!」 一瞬。老化する僅かだがほんの一瞬早く分身が放った風の魔法がワルドの腕を切り飛ばしたッ! ズキュン! 「チッ・・・!」 斬り飛ばされた腕のみ老化し、干からびたそれを投げ捨てもう一度直を仕掛けるべく掴もうとするが脚に力が入らなくなり膝を付く。 「くそ…だが…危なかった…腕一本犠牲にした価値はあったというものだ…!」 あれ程のダメージを受け印の効果で無理矢理体を動かしここまできたのだ。限界などとうに超えている。 「私の…腕一本の代償としては高くついたが…ここはウェールズを斃せただけでもよしとせねばなるまい…!」 残った右手で杖を握り中空に浮く。ワルドの方も一瞬だが老化させられた事と左腕を失った事で、もう分身は消えている。 「この城はじきに我が軍が落す…!そうなれば今の貴様達ではどうしようもあるまい…愚かな主人共々薄汚い傭兵にでも首を取られるがいい!」 逃げようとするワルドに対して広域老化を再び仕掛けようとするが、気を失ったのか突っ伏してブッ倒れているルイズが視界に入り (…殺すより生かす方が先かッ!) ここで広域老化からの直触りを行えば恐らく、いや確実に敵中突破するだけのパワーは残らない。そう思いワルドを見逃した。 デルフリンガーを杖にして立ち上がる。戦闘はほぼ不可能だが移動は辛うじて可能だった。 ルイズに近付き起こそうとするが、起きようとしない。 軽く、デルフリンガーの柄で頭を小突くが、それでも起きない。 水でもあればブッかけ叩き起こすところだが生憎ここにはそんな物は無い。 ブチ破った扉の外の方から足音や怒号、悲鳴などの叫びが流れ込んでくる。 ここで起こそうとして時間を食ってはマズイ。そう判断しグレイトフル・デッドの指が三本しか無い手で器用に抱えあげる 「兄貴ィ……船はもうとっくに出ちまったがどうするんだ…?」 「考え無しに残るかよ…隠し港にタバサを待たせてある」 「敵は五万だぜ?突破できるのか…?」 「勝ち戦が確定した敵ってのは無駄死にを避けるもんだ… 残ったスタンドパワーを全て最初に注ぎ込むッ!それで駄目なら…そんときゃあ最期の最期まで敵のノドに食らい…付くまでだ」 「やっぱり兄貴はスゲーや!そうだな、たかが5万。兄貴にとっちゃあ飯を食いに行くようなもんだな」 その言葉と共にルイズを抱えたグレイトフル・デッドの体から煙が流れ出す。 礼拝堂の外に出ようとするが倒れているウェールズに気が付いた。…老化はしていない。 氷で冷やしているものを除けばグレイトフル・デッドで老化しないものは『無機物』と『死んだ生命体』だけになる。 ゴールド・エクスペリエンスが終わってしまった生命を呼び戻す事ができないようにグレイトフル・デッドも終わってしまった生命を老化させる事などできやしない。 斃れているウェールズに近付きその指に嵌っている大粒のルビーを抜き取り言葉を紡ぎだす。 「その覚悟だけは…認めてやる…それに免じてオメーの言葉は伝えといてやるよ…」 そうして、自分がブチ破った扉に向き直りウェールズの死体に背を向けると 「アリーヴェデルチ」 ただそれだけを言い残し礼拝堂を後にした。 城の中に一人だけの足音が静かに鳴り響く。 城の外は未だ大砲の音や兵士達の叫びが聞こえるが、それに反して城の一角だけは静寂に包まれていた。 朽ち果てたメイジや兵士達の死体を踏み越えながらただ前に突き進む。 ―――死は誰にでも訪れる。例え貴族だろうと平民だろうと平等に。 王軍はウェールズの戦死も手伝い士気が下がり城の内部にまで突入され全滅が確定している。 ならばここで全員を巻き込もうが問題無い。この城に残った連中はその覚悟ができているはずだ。文句を言われる事などあろうはずもない。 隠し港へ向かうまでに呻き声をあげ辛うじて生きているヤツらも居たが、その生き残りの全てにトドメを刺す。 無論、王軍、貴族派の区別などしない。淡々と、そして平等に命を狩り獲る。 比率で言えば貴族派の人数が圧倒的に多かったし王軍の生き残りの貴族などほぼ皆無だったがそれでも数人は居た。 だが、それでもトドメを刺した。どの道広域老化が解除されれば包囲され殺されるか捕縛され処刑される運命だ。 なら早めに楽にしといてやるという気になっただけことだ。 周りの呻き声すら聞こえなくなった頃には城の内部に突入してくる部隊は皆無になっていた。 この戦いは貴族派の勝利が確定している。だからこそこんな訳の分からない…老化などで死にたくないという感情で支配されている。 主力部隊が傭兵で構成されているならその感情は加速度的に膨れ上がる。 傭兵はあくまで金で雇われた存在であり、雇い主に忠誠を誓う存在ではない。 金で雇われているからこそ傭兵は無謀な突撃などはしたりしない。命が無ければ報酬を受け取ることもできないからだ。 ぶっちゃけハッタリである。スタンドパワーなぞスデに尽きている。 グレイトフル・デッドそのものは発現させる事はできるが、老化を起こすだけのパワーは無い。 最後の力を使えばまだやれない事はないだろうが、それでは離脱するだけのパワーが無くなる。脱出経路が存在するのに特攻する気など毛頭無い。 全力で城の中で老化を引き起こし、敵の戦意を喪失させこれ以上の介入を防ぐ。 人これを良く言えば『策略』悪く言えば『ペテン』と言う。 その目論見は成功したようだが、あまり長くは持ちそうもない。隠し港へ続く道以外の生き残った敵はそろそろ老化から回復している頃だ。 その連中が外に出れば、今度こそ夥しい数の敵が雪崩れ込んでくる。 そうなる前に目的地にたどり着かねばならないが、負傷も手伝いギリギリと言ったところだろう。 だが、歩いている途中に再び膝を付く。 「血が少しばかり足りねぇな…」 急所は避けたとはいえ5体のワルドの攻撃を受け続け血を流しすぎている。 立ち上がり歩を進める。止血する道具など無い上に時間すら残されてはいない。 壁を支えに手を付き港に向かうが、その壁にも血の跡は残されていた。 鍾乳洞の港の穴の上でホバリングをしているシルフィードの上でタバサとキュルケがプロシュートの到着を待つ。 ヤバくなったら逃げろとは言われていたがギリギリまで待つつもりだった。 「さっきまで静かだったけど、そろそろ危なくなってきたわね…」 再突撃が行われ、遠くから兵の叫びや破壊音などが徐々に近付いてきているが肝心の者はまだ現れない。 しばらく時間が経ちこの港にも反乱軍が雪崩れ込んでくると思ったその時 ――来た 宙に浮き運ばれているルイズの後ろに血に塗れたプロシュートがゆっくりとだが歩いている。 タバサがシルフィードに命じ二人に近付く。 「その怪我はどうしたの!?」 「説明してる暇…はねーぞ…」 港の入り口の方から兵士達の声が聞こえ、敵がもうそこまで迫っている事を理解させた。 「ワルド子爵は?」 「あのヤロー…は敵だ」 「…よく分かんないけど逃げた方がいいって事ね」 「掴まって」 這い上がるようにシルフィードに乗り込むと穴の中へと降下を始める。 それと時を同じくして貴族派のメイジや兵士が港に雪崩れ込んできた。 「間一髪ってとこだったけど…その傷大丈夫なの?」 壁に打ち付けられ出来た傷は打撲などが殆どで出血自体は大した事は無いがワルドと分身にやられた傷はそうも言ってられなれない。 他の傷はシルフィードに積んできた包帯や薬などで止血もする事はできたが、大腿部に受けた一撃がヤバイ。 動脈の一部が傷付き血が止まらないでいる。下手すればトリステインに帰り着く頃には失血死だ。 キュルケとタバサの顔が青くなる。系統が水でない以上治癒の魔法は使えないし、使えたとしても秘薬など無い。 プロシュートが深く息を吐く。それを見て、まさか諦めたのではないかと思った二人がその両眼をで見るがそんな絶望したような目は見せていない。 「折れた剣…アレまだあるか?」 「……え?ええ、そりゃあの武器屋に突き付けてやろうと思ってたから持ってきてるけど…なにに使うの?」 「…火出してくれ」 キュルケが火球を作ったのを確認すると折れた剣を手に取りその中に刀身を突っ込む。 (メタリカがありゃあこんな事しなくても済むんだがな…) 適度に熱せられ刀身が赤熱するとそれを火球の中から引き抜き息を吸い再び深く息を吐き厚く巻いた布を咬むと…… 刀身を…その傷口にッ!『ブッ刺したッ!!』 ドジュゥゥゥ 「…ッ!~~~がッ!!」 一瞬血が流れ出るが赤熱した刀身に焼かれ瞬時に血は止まる。 焼いて傷口を塞ぐ。最も原始的だが最も確実に血を止める方法だ。 当然、その痛みは半端無い。傷口に刺された痛みとその傷口を焼かれる二重奏曲とも言える激痛が駆け抜ける。 1秒…!2秒…!3秒…!4秒…!5秒…! その行動に半ば放心したように見ている方もやっている方もその5秒がやけに長く感じられ4秒と5秒の1秒間の間に 『8秒経過!ンッン~~♪実に!スガスガしい気分だッ!歌でもひとつ歌いたいイイ気分だ~~ フフフフハハハハ。100年前に不老不死を手に入れたが……これほどまでにッ!絶好調のハレバレとした気分はなかったなァ… フッフッフッフッフッ、ジョースターの血のおかげだ。本当によくなじむッ!最高に『ハイ!』ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハーッ 9秒経過ッ!』 (長いんだよ…ボケがッ!) やけにテンションの高い幻聴が聞こえ心の中で突っ込みを入れ5秒経ち血が止まったのを見ると剣を引き抜き投げ捨てる。 少なくともこれで失血死の可能性は無くなった。 赤熱した剣を引き抜くまで意識を保っていたという精神力そのものが賞賛に値されるものだが さすがに、度重なる傷の痛みと極度の疲労により意識を落し未だ気絶しているルイズの方に倒れ込んだ。 ―――主に忘れられた中庭の池。 その池に浮かぶ小船の中にルイズが居た。 10年前ならワルドがこの場所から連れ出してくれただろうが、今は違う。 信頼を裏切り、ウェールズを殺し、自分すら殺されかけたことを思い出し泣いた。 泣いていると船が動き島の湖岸から船に手がかけられ引き寄せられる。 それに気付き手の先を見る。 プロシュートとなにやら得体の知れない化物がそこに立っていた。 その化物に抱きかかえられ船から地面に降ろされる。 「泣いてんのか?」 そう言われ、子供のように頷くと―――思いっきり殴られた 「この腑抜けがッ!なんだ!?あのザマは!?ええ!?」 さすがに踏まれこそしないが襟首をグィィッと掴まれ顔を引き寄せられる。 「いいかッ!オレが怒ってんのはなてめーの『心の弱さ』なんだルイズ! そりゃあ確かに『ワルド』にいきなり裏切られたんだ!衝撃を受けるのは当然だッ!自分まで殺されかけたんだからな。オレだってヤバイと思う だが!オレ達チームの他のヤツならッ!相手に裏切られたとしてもうろたえたりはしねぇッ!たとえ腕を飛ばされようが脚をもがれようともなッ!! オメーはマンモーニなんだよ…ルイズ!ビビったんだ…甘ったれてんだ!分かるか?え?オレの言ってる事 『裏切り』のせいじゃあねぇ。心の奥のところでオメーにはビビリがあんだよ! 『成長しろ』ルイズ!成長しなけりゃあオメーは栄光を掴めねぇ!」 唐突に殴られ半ば放心しながらそれを聞いていたが、使い魔に殴られた事に怒ろうとした。 だが、怒ろうにも相手の方がそれを上回っており……目が覚めるまで説教が続き、さっき泣いていた事とは別の意味で『泣きたくなった』 軽い衝撃を受け目を覚ます。 薄く目を開けると空と自分の顔の横に使い魔の顔があった。 夢と違うのは体のあちこちから血を流している事だ。少し顔を動かすとキュルケとタバサが珍しく慌てた様にしてこっちを見ている。 風に紛れて鉄と何かか焦げたような臭いが流れ、血と何かが焼けた臭いだろうと思い、自分が助かった事を認識する。 体を動かそうとするが動かない。 当然だ。倒れたプロシュートの体が半分ぐらい自分に重なっている。 血の臭いとその重さにそれを退けようと思ったが、あの時自分の魔法を信頼し命を賭けてくれた事を思い出しそのままにしておこうと思った。 ワルドの分身に襲われる瞬間まで魔法を撃っていたが、そこからの記憶無い。 生きているという事はワルドに勝ったのだろうが…そのせいでプロシュートがこんな大怪我をしてしまったという事に少し悲しくなった。 「……この腑抜け野朗が…!」 そう呟くような声にハッっとする。思わずその顔を見るがその目を閉じたままだ。 「…オメーは…マン…ーニなんだよ…ッシ」 ……さっきまで夢の中で受けていた説教とほぼ同じような事を言っている事に『実は起きてるんじゃないか?』と思い動く方の手で顔をつねってみる。 起きていれば多分えらい事になっていただろうが、反応は無い。 その後も半ばうわ言のようにそれが続いているが、ただ違うのは相手が自分ではなく時折聞こえる『ペッシ』という人物であるという事だ。 それが誰なのか気にはなったが 『ブッ殺…と心の中で思っ…なら…その時スデに…動は終わって…るんだ』 という危険極まりない言葉に、帰ったらはしばみ草を食べさせてやろうかと思いになり流れる雲をぼんやりと見ながら再び目を閉じた。 「分かったよ!プロシュート兄ィ!兄貴の覚悟が!『言葉』でなく『心』で理解できた!」 そう叫ぶ弟分はもうマンモーニの目はしていない。 別世界にいる弟分に覚悟が伝わったかどうか分からないが、少なくともこの夢の中のペッシはマンモーニではない。 「やれ…やるんだペッシ…オレはお前をここから見守っているぜ…」 このペッシにすらそれが聞こえているか分からないが、それでも今は見守ろうと思った。 プロシュート兄貴 ― 左脚にひび 右大腿部に火傷 全身打撲 出血多量 [[←To be continued ゼロの兄貴-24]] ---- #center(){[[戻る< ゼロの兄貴-22]] [[目次 ゼロの兄貴]] [[>続く ゼロの兄貴-24]]} //第五部,プロシュート